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【優吾】
緑「んじゃ、Aちゃん！また会うことあれば！」
「ふふっ。ちゃんとお家に帰るんだよ〜！」
黄「どの口が言ってんだよ」
「…ちゃんと帰るって」
今日俺がこうしてAのバイト終わりを待っていたのは他でもない。
ここ最近、家に帰っていないらしい不良娘の確保。
多分、こんなことしてる限り俺は一生こいつにとって、幼なじみなんて軽く超えて、親父のような、兄貴のような存在で、意中の男性になんてなれっこないんだろう。
仮にも、Aは俺と同い年の大学生なんだから。
黄「お前ね、おばさん青ざめてたよ？もう3日も帰ってないって…」
「もう大学生だもん」
黄「分かるよ？分かるけどさ…。心配なんだろ…」
「私だって…分かるもん」
黄「…だよな。ん、ごめん」
“ごめん”と伝えながら頭撫でれば、止まる足。
ほんと、考えなくていいことまですぐ考える癖は子どもん時から変わんない。
黄「一人暮らし、したいって言ったんだろ？」
「なんで知ってんの」
黄「決まってんだろ。お前んとこと俺ん家、ツーツーなの忘れたの？」
「…も、やだ。こんな街」
黄「出ていくの？」
「いずれは…出るよ。絶対に。家族から離れたいわけじゃない。自立したいとか、夢があるとかでもない。…ただ、あの頃の私を知っている人たちの目から…逃げたい」
“逃げたい”
Aがあの頃の自分を忘れたくて、捨てたくて仕方のなかったことなんて、いやってほどにわかってたけど…ここまでだったとは計算外。
でも今まではずっと、過去を捨てることしか考えていなかったAを知ってる俺からすれば、“一人暮らし”というワードは、いくらか前向きに見えた。
過去をどうこうすると同時に、未来を生きようとしているように思えたから。
「捨てたいんだけどな…病気だった過去なんて」
黄「こーら」
「…たまにはいいじゃん。それが本心なんだもん。優ちゃんにしか…言えないんだもん」
黄「それはずりぃよ、お前〜」
「ふふっ。ずるいかな？…ずるいか」
ヘラっと笑う幼なじみはなんだか儚くて、いなくなってしまうのを怖く感じる時がある。
そんなこと、絶対にさせるつもりはないんだけど。
“俺も�眞呂砲呂覆鵑�甘えられるから”
あの慎太郎の言葉を、こいつも思ってくれているのなら。
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作者名：かん。
| 作成日時：2022年11月4日 20時
