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【優吾】
久しぶりにAがうちに泊まった。
小さい頃なんて1週間ごとに互いの家で泊まってた時期もあったけど、数年ぶり。
さすがにあの頃と違うのは、ベッドと布団に分かれて眠っていることぐらいだろうか。
黄「そっちでいいの？」
「ん…」
黄「…やっぱやめとけ？ベッド使いな。下、埃っぽいと思うし」
「…っ」
黄「A？お願い。じゃなきゃ俺、心配で眠れない」
はじめてのアルコール。
それも親父曰く、それなりに高い度数のそれをある一定飲まされたんじゃないかって。
「…わかった」
黄「ん？あ、ベッド使うのね」
「ん…ありがと」
どうぞ、ってベッドあければ、ポロポロ涙の流れてきてしまうA。
アルコールのせいで涙腺ぶっ壊れてんのか…それとも、ここまでAの心が揺れてしまう何かがあったのか…。
後者だとしたら、なんだろう。
「…な、でっ」
黄「ん？なに？」
「なん、で…そんな、優しいの…っ」
黄「…えー？んなこと、考えたこともねぇよ。てか、別に特別優しくしてるつもりもないし…」
なんか言われたの？って、そう聞きたかった。
聞きたかったけど、聞けなかった。
それを聞いてしまったら、ただでさえ深く心に傷を負ってしまったAを、さらに傷つけてしまう気がしたから。
なにを聞いたわけじゃなくても、なんとなくAのそういう部分がわかってしまうのは、きっと俺にとってAが特別以上の存在だって…無意識に、思ってるんだろう。
「…ﾊｧｯ」
黄「なーんだよ。納得いかない？」
「んーん…っ。ちが、けど…」
黄「違うけど？」
お互い、それ以上の言葉は続かなかった。
言いたくないなら、それでもいいんだ。
一番怖いのは、抱え込んで、傷が深く残ること。
それさえ避けられれば、俺は。
次の日、特に仕事のなかった俺はゆっくりな起床。
起きたらもうAはバイトがあるとかで、俺がいつもするのと同じように整えられたベッドには、もうAの温もりも涙も残っていない。
“お仕事疲れてるのに押しかけてごめん。放送楽しみにしてます。A”
繊細な文字で、そこらにあった付箋に刻まれた言葉。
黄「あ、もしもし？」
バイト終わりに電話をかけてきたAの声が、昨日よりは少しスッキリしていたことに安堵した。
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作者名：かん。
| 作成日時：2022年11月4日 20時
