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【優吾】

黄「母さん、ごめん。はちみつ紅茶…作ってやってくんない?」


なんとか落ち着いて眠れているAだったけど、小さく咳き込みを繰り返すのを見れば、アルコールで刺激されてるみたいで。

その昔Aの病気のこととか調べた時に、アルコールやタバコはダメだって見た。


黄「Aー?ごめんな、せっかく寝れてんのに。これ、かあちゃん作ってくれたから飲んどきな」

「…ん。あちっ」

黄「ははっ。マグカップ持ってんだから、あちぃのわかんだろ」


“オサナナジミ”としてのこんなしょうもない会話でも、俺は幸せだった。

それは、この3年で少しだけ変わってしまった自分の環境が、Aといる時だけは、幼い頃からなにひとつ変わらない空間で。

誰とどこにいるときよりも、一番俺らしくいられる心地よい場所はここだったから。


黄「なーんで泣くんだよ」

「…っ」

黄「…どっちのが楽?話すのと…放置」

「ハハッ…放置って…」

黄「だってそれ以外の言葉思いつかねえんだもん」


“ゆうちゃん、バカでぇ”なんてクスッと笑った拍子に緩んだAの頬に、ツーッと伝う一筋の涙。


「飲めないって、言った」

黄「うん」

「まだ18だもん…って」

黄「正当な理由だな」

「でも…そんなの、みんな…って」

黄「…確かにな」

「…言えなかった」

黄「病気のこと?」


“嫌われたくなかった”

“好きな人が離れるのが、怖かった”


黄「本気で、好きだったんだな…」


「でも…ダメ、だった…」


黄「…ん、そっか」


本気で好きだったからこそ、早いうちに打ち明けたい気持ちだってあっただろう。

それでも邪魔をするのは、過去の傷。


“ 仕方ないね、こんなだもん”


高校を卒業する少し前のあの時、そう言って苦しそうに笑ったA。

家から少し離れた高校に通ったのだって、病気のことを詳しく知られたくなかったからで。

それでも隠しきれなかったあの時、大切だった人から、その事実を受け入れてもらうことのできなかった事実は、俺が思っているよりも深い傷になっていたみたいだ。


「怖かった…。息、できなくて…っ」

黄「ん…。思い出さなくていい」


“忘れよう”


とは、言ってやれなかった。

こいつが器用に上書き保存なんてできないのを、俺は分かっていたから。

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作者名:かん。 | 作成日時:2022年11月4日 20時

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