どんな明日も… (ページ11)

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【北斗】

あ、多分ここが人生の帰路なんだろうなって思った。

春先のドラマが思った以上の大反響で、そこそこの地位を獲得しているように思えた。

高校入学を機に上京して、そのあとすぐにグループが事実上の解散というか活動休止というか、とにかく自分の生きていく場所が奪われたみたいに感じた。

“1年生として編入することになるんだよ？”

荒れ放題だったあれからの自分。

もうどうだってよくて、とにかく俺を見ろって…そればっかりで完全に荒んでいた。

幸か不幸か、そんなやさぐれて腐りまくってた俺に巡ってきたチャンス。

緑「映画化！？マジですか！？」

黒「映画化…？」

ス「松村と…あと、京本も。ちょっといい？」

今後の芸能活動と学業の両立を見越して、事務所のスタッフさんから打診をされた来学期からの転校。

俺も京本も、システム上1学年下に編入という形になるわけで。

そんなの悩まないわけじゃなかった。

俺の仕事のために、思い入れのある大好きな地元静岡を離れ、一家での上京を決意してくれた家族。

決して裕福な家庭ではなく、どこにでもある普通の家庭。

一年というその時間が、必ず成功を保証してくれるわけでもない。

でも…。

黄「北斗、秋から編入すんだって？」

黒「え？あ、うん…。両親も、背中押してくれたから」

黄「そっか。…よかったな、北斗」

黒「まだ、分かんないけどね。でも、決めちゃったから」

もう後戻りなんてできないよね…って、少し不安な気持ちをこぼした俺に、髙地は“北斗はすごい”と言った。

北斗はすごい、なんて言ってるけど、その目の咲きが俺を見てるわけじゃないことに、きっと本人は気づいちゃいなくて、それを知ってんのは俺だけ。

黒「…Aちゃん、元気にしてる？」

黄「元気、元気。元気に男も取っ替え引っ替え、まぁ…謳歌しきれなかった青春取り戻してるってのがしっくりくるかな」

黒「青春って…そんないいもんなのかな」

黄「さぁ？Aは青春取り戻したいんじゃなくて、みんなの“普通”を自分も経験したいだけだから」

普通ねぇ…なんて自分を振り返れば、なかなか波瀾万丈な青春真っ只中。

そんなこと思ってんのが髙地にはわかったのか、“あいつは好きで普通を失ったわけじゃないからさ”って、苦しそうに笑った。