いつも僕らは-4- (ページ27)

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【177】YOU ページ27

「おーそーいー…」

河合「そんな急かすなよ。翔太、今日仕事納めって言ってたし、忙しいんだよ。夕方まで待って？」

念願の退院日。

あれだけ頑張った治療のおかげで、冬休み前に先生が気になるって言ってたところは良くなってくれたらしい。

確かに、冬休みに入る少し前から感じていた体のだるさや夜中の微熱は楽になった気がする。

一時的なものなのかもしれないから、それなりの期待で止めておくけど。

河合「大丈夫。ちゃんと良くなってるから。このまま、上手くいけばまた寛解に持っていけると思うから」

「喘息は？」

河合「そっちは、もうちょっと上手につき合っていきたいかなぁ〜。…ねぇ、A？」

「ん？なぁに？」

河合「…もう一回、頑張ってみない？注射」

中学生の時に、挑戦をしてみた自己注射。

色々あって、今は続けない選択をした。

一番は、やっぱりお金のかかることだし。

お兄はそんなの絶対気にすんなっていうけど、やっぱり気になるよ。

河合「翔太に気遣ってんのか？」

「そりゃぁ…使うよ、それなりに」

河合「Aさ。…もしね？もしもの話だけど」

「…え、なに？」

河合「もし、Aの治療費を払ってくれるのが、お母さんだったら。“親”の払ってくれる治療費なら、“子ども”でまだ“高校生”のAは、そういうこと気にせずに治療を受けられるのかな？」

河合先生の言ったことなんて、考えたこともなかった。

治療費を払うのが、母だったら…なんて。

河合「同じことでさ。んー…医療費だけじゃなくて、それこそ、学費とかも含めて。他の子たちと同じように、親が払うんだったら、何か深く考えたりしたのかな？」

「…それは」

河合「まぁ、どっちにしてもAの場合は…お母さんだけだから、考えたのかもしれないけど…。今ほど、無意識に“お金ありき”で物事考えなきゃ…ってことは、なかったんじゃないかなぁ…？」

俯いていた顔を上げれば、優しく笑う河合先生。

大人の言葉は、参考にしとくといいよ？なんておどける先生。

河合「翔太はさ、きっと…そうなりたいんだと思う。“親代わり”なんじゃなくて、限りなく“親”に近づこうとしてるよ？」

“人は一人じゃ、親になれないんだよ”

そう言った河合先生の言葉が、何度もこだましていた。