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【岩本】
岩本「おい、不良娘」
俺に声をかけられ、絵に描いたように“やべっ！”って顔をしているのは、抗がん剤の影響ですっかり眉毛の抜け落ちた担当患児。
器用に車椅子を操作して、俺の方へ来るかと思えば、クルッと向きを変えて、またガラスの向こうを見る。
その先にいるのは、生まれたばかりの新生児たち。
ボーッとその子たちを見つめて、時々優しい顔を見せて、ちょっと咳き込んで、またボーッと見つめて。
岩本「なんかあった？」
「別に…」
岩本「苦しくなってない？」
「…だいじょーぶ」
急に塞ぎ込んだり、考えすぎることは、昔からよくあるAだから、このぐらいの距離感が、いちばん彼女に持って心地いいことも分かってる。
だから、あえて今は距離を詰めたりはしない。
って、できるようになるまでには、主治医として関わらようになってから、何年もかかったんだけど。
「ひぃせんせー…」
岩本「なんですかー？」
「どうしてあっちの子達は、ケースに入ってるの？」
岩本「あぁ…」
なんて答えてあげたらいいのか、パッとは思い浮かばなくて、そのままボーッとクベースを見つめるAを横目に、一緒にクベースを見つめていた。
新生児室に入って、コットから赤ちゃんを抱き上げるお母さんたちの対面で、看護師に処置をされる、クベースの中の小さな命。
岩本「他の子たちよりも、たくさんの助けが…必要なんだ。あの子たちは」
考えた挙句、ストレートに、いろんな赤ちゃんがいることを伝えると…Aは、ポロッと一粒、涙を落とした。
俺はその場に立ち会ってないけど、生まれてすぐのAは、こちらのクベース側の赤ちゃんだったと聞いている。
2歳ごろまでは、おうちよりも、病院で過ごす時間の方が長かったA。
きっと記憶はないんだろうけど、苦しそうに歪んだ表情は、もしかすると、心のどこかで…自分がそちら側にいた時を覚えているのかもしれない、なんて。
と、クベース内の赤ちゃんが泣き出すのを見て、Aが静かに涙を一筋。
「ひぃせんせ…」
岩本「ん？」
「また、ここ来ても…いい？」
力一杯泣き叫ぶ赤ちゃんを真っ直ぐ見つめて、Aがそう言った。
岩本「うん、いいよ」
誰かに言ってから来てね、なんて言葉は、今はそっと飲み込んだ。
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かん。(プロフ) - はなさん» コメントありがとうございます！一番好きと言っていただけて、嬉しい限りです(;_;)移行先でも、お楽しみいただければ幸いです！これからも、作品ともども、よろしくお願いいたします(^^) (2021年9月11日 1時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - いつも素敵なお話ありがとうございます^_^占ツクの中で一番好きなお話です！看病系のお話が好きで、主人公ちゃんの体調不良のお話を書いていただけてとても嬉しいです。ストーリーも感動する内容が多くて、本当に主様の作品のファンです！これからも楽しみにしてます！ (2021年9月9日 22時) (レス) id: 0623cd8dfd (このIDを非表示/違反報告)
佑妃奈(プロフ) - サルコイドーシスはじめて聞きました。調べてみたら全身？に症状が出る病気みたいで心配です。 (2021年9月8日 7時) (レス) id: f264ee5bd6 (このIDを非表示/違反報告)
かん。(プロフ) - 佑妃奈さん» いつもコメントありがとうございます！少し物語が動きますが、またゆっくりお待ちいただけたら嬉しいです＾＾ (2021年9月8日 0時) (レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
佑妃奈(プロフ) - 北斗くん何があったか気になります｡ (2021年9月7日 21時) (レス) id: f264ee5bd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かん。
| 作成日時：2021年7月4日 12時
