10.会いたい気持ちが溢れ出す ページ10
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久しぶりに作ったハンバーグは可もなく不可もなく、といった味だった。新山くんは美味い！って言いながらあっという間に平らげてくれて、大袈裟だなぁと思ったけど普通に嬉しかった。
「あーーまっじで美味かった…」
「褒め過ぎだって」
「ほんまに美味かったもん」
へにゃ、と笑った顔に不覚にもときめいてしまう。煙草を吸ってる時の気だるい感じとも、情事中の色っぽさとも全然違う表情だった。新山くんは、他にどんな顔を持っているんだろう。
「…誘ってんの？」
「うん、」
食べてすぐだけど。食器もそのままだけど。ベッド、すぐそこだけど。新山くんに触れたくて、…触れられたくて素直に頷く。ラグを敷いているとはいえ、背中が痛い。でもそんなの、どうでもよかった。
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……あーあ、何やってんだろ。はぁ、とため息を吐きながら片手に煙草、片手に缶チューハイを持って夜空を仰ぐ。お酒はあんまり強くないけど、たまに飲みたくなる。今日は飲みたい気分だった。
チラ、と左隣を見てみるけど窓が開く気配がまるでない。ここ最近、新山くんは不在の日が増えた。代わりに、テレビや街中に貼ってあるお笑いライブのポスターで顔を見ることが増えた。つい、足を止めてしまうのだ。新山くんいるかな、…あ、いた。こんな具合に。
やっぱり別世界の人なんだな、ってまざまざと思い知らされる瞬間が増えてちょっとしんどかった。連絡先も知らないし、会いたいとか言えるような間柄でもないし、…私たちって、一体何なんだろう。
「会いたいなぁ…」
「誰に？」
「新山くん」
「何で会いたいん？」
「さみしいから、」
……あれ、…ちょっと待って。私今、誰と会話してる？
視線を左側に向けたら、新山くんがいた。新山くん、今日もいないと思ってた。帰ってこない、って。
「に、…やまくん、」
「酒飲んでるん？えぇやん、俺もビール飲もー」
そう言い残して、部屋に戻った新山くん。その数分後、インターホンが静かな部屋に鳴り響いた。期待に、胸が高鳴る。まさか、…でも。逸る気持ちを抑えつつ扉を開けると、ビールを片手に持った新山くんが立っていた。
「確認もせんと開けたらあかんやん」
女の子なんだからと心配してくれる新山くんは、別世界の人でもなんでもない。私がよく知ってる、お隣の新山くんだった。
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作者名：あず | 作成日時：2024年2月12日 17時
