07.恋の自覚はあまりにも突然 ページ7
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シャワーでも浴びて頭をすっきりさせようかな。でも新山くん起こしちゃうかな。そもそも新山くんって今日休みなのかな。そんな事を考えていたら、背後から温もりに包まれた。振り向かなくても分かる。新山くんだ。
「おはよ」
「おはよ。眠れた？」
「結構寝れた」
「良かった」
セミダブル買って正解だったな、と考えながら煙草を口に運ぼうとすると「おれにも」と舌足らずな声が聞こえた。ふふ、と思わず笑みがこぼれる。紙じゃないよ？と、一応伝えて吸いかけのそれを新山くんに差し出した。
「……うわ、」
「うわ、って。どう？」
「何やろ、すごい違和感ある」
「分かるなぁ、私も初めて吸った時そうだった」
うーん。と唸る新山くんは、きっと渋い顔をしているんだろう。後ろから抱き締められてるから、顔が見えないのがちょっと残念。
「Aと間接キスしてもーた」
「昨日散々やっといて今更じゃない？」
「品がないわぁ」
手元に本体が戻ってくる。もう一本吸っちゃおうかな、とも思ったけどそれより歯磨きがしたい。喉も乾いたしそろそろ部屋に戻ろう。新山くんにそう提案するけど、何故か両腕の力が強くなる。
「おーい、新山くん。離して、部屋戻ろう？」
「……いや」
いや、って。駄々っ子か、と思わず心の中で突っ込む。まだ寝ぼけてるのかなぁ、どうしたんだろう。離してくれなきゃ身動き取れないぞ。もぞ、と身動いでみるけど余計抱き締められるだけだった。やれやれ、どうしたものか。
「…誰とでもしてるん？」
「何を？」
「キスとか、……昨日みたいなこと」
言いづらそうに、最後の方はほとんど声になってなかったけど抱き締められてるから全部聞き取れた。誰とでもしてるのか、かぁ……正直この歳になればその場の勢いで、とか雰囲気に流されて、とか恋人でもない人とそういう事になる事もあるかもしれないけど……
「…新山くんだけだよ。新山くんこそ他にもいるんじゃないの？まぁいたとしても私は別に、」
何とも思わないけど。そう言おうとして、何故か言葉が詰まってしまった。何とも思わない……本当に？もしかしたら少しだけ、嫌かもって思う、かも。……どうして？え、やだもしかしてもしかしなくても、……そのまさか、だったりする？
「俺もAだけやから」
「…っ、」
耳元で掠れた新山くんの声がした。あまりの色っぽさにどきりとしてしまう。…どうしよう、何でこんなタイミングで自覚なんかするの、私。
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作者名：あず | 作成日時：2024年2月12日 17時
