06.全部君のせいにする ページ6
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ベランダに出てぼんやりと夜空を見上げていたら、背後から窓が開く音と歩み寄る足音がした。ふわりと煙草の煙が宙を舞う。あぁやっぱり、紙と電子じゃ香りが違う。
お互い会話をするでもなく、吸って吐いての繰り返しだった。さっきまでのムードはどこへやら。本当に新山くんとしたのだろうかと錯覚するくらいだ。
「なんか俺らさ、ムードもへったくれもないな」
「同じこと考えてた」
「ほんま？」
「普段通り過ぎるもん」
スティックを交換しながらそう言うと、新山くんは体を反転させて手すりに背中を預けた。夜空にゆらゆらと、煙草の煙が昇っていく。乱れた前髪の隙間から覗く瞳に捕えられると、さっきまでの甘い熱がじりじりと胸を焦がす。体を重ねてしまうと、こうなることは分かっていたはずなのに。
「もっかいする？」
「…どうしようかな」
「えぇやん、…あかん？」
またそうやってずるい聞き方する。…本当にずるい。返事を躊躇っていたら、いとも簡単に唇を奪われた。触れるだけの可愛らしいものじゃない。強引で荒っぽくて、流されてしまいそうになる。唇が離れた一瞬、だめ、と弱々しく口にしてみたけどまるで意味がなかった。
「…っ止められへん、…なあA、」
「〜〜…ッん、！」
「A…」
分かってやっているのか、それとも無意識なのか分からないけど。耳元でそう何度も名前を呼ばないで欲しい。もう全部、新山くんが悪い。今日のことは全部、新山くんのせいだ。都合の良い女でもいい。私だって、気持ち良くて良い思いをさせてもらってるんだから。
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──翌朝。気だるさを感じながら寝返りを打とうとするも、思うように体が動かせない。寝ぼけた頭で考えながらその原因を探ると、隣に新山くんが寝ていた。……あ、そっか昨日。昨夜のことを思い出して気恥しさが込み上げるわけでも、胸をときめかせる訳でもなかった。やっちゃったか、新山くんと。ただ、それだけだった。
暫く新山くんの寝顔を見ていたが、まるで起きる気配がないので起こさないようにベッドから出る。寝起き一発目に煙草もどうかと思ったが、今日は吸いたい気分だった。
「はーーー…」
……上手かったな、新山くん。それにあの瞳。あと、声。良かったなぁ……まだ少し寝ぼけた頭でそんな事を考えながら空を仰いだ。
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作者名：あず | 作成日時：2024年2月12日 17時
