05.ただ貴方を感じたい ページ5
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「これ何育ててんの」
「大葉とかハーブ系」
「洒落てるわぁ」
約束の鍋パ当日。しっかりシメまで楽しんだ後、一服しよ、と誘われたので玄関から適当なサンダルを持って外に出た。ベランダで細々と育てていた葉っぱたちを紹介すると、ちゃんと自炊してんねや、と新山くんは言う。まぁ人並みには。そう返しながらスティックをホルダーに差し込んだ。
「今日はありがとうな。楽しかったわ。鍋も美味かったし」
「私の方こそ楽しかったよ。やっぱり誰かと一緒に食べるご飯は良いね」
「それやったらさ、たまに一緒に食べへん？」
「え、いいの？嬉しい」
二人で手すりに寄り掛かりながら、煙草を片手に他愛のない話を続ける。いいなぁこの空気感。新山くんといると気が楽だ。少し香りがキツい紙の煙草も気にならない。むしろこの香りこそ新山くん、って感じがする。
「新山くん」
「んー？」
「キスしたい」
「…Aから誘うなんて珍しいな、」
いつもより近くで、新山くんの香りを感じたからかな。唇が触れると、ぴり、と苦い香りがした。でもその苦味こそ新山くんで、…新山くんとのキスで。もっと触れていたいと思うのはどうしてだろう。
「──…満足した？」
耳元でそっと新山くんが囁く。ぞく、と背中が震えたのは期待しているからだ。してない、と聞こえるくらいの声量で呟くと同時に唇が塞がれた。…あーあ、キスばっかりして…煙草、勿体ない。でもやめられない。…やめたくない。
ぬ、と差し込まれた舌に気付いた時には拒絶する暇すら残っていなかった。されるがまま、とはこの事か。…ま、いっか。新山くんとするキスは、気持ちよくて好きだから、
「…っん……」
「………A、」
ベッド行く？なんて、そんな野暮なこと聞く必要がなかった。新山くんの目を見たら分かる。別に恋人でもないし、ただのお隣さんで喫煙仲間だけど、新山くんならいいや。そう思うくらいには、新山くんの事が特別になっていた。新山くんがどう思ってるかは知らないけど、別に知る必要もない。今はただ、新山くんを感じていたかった。
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作者名：あず | 作成日時：2024年2月12日 17時
