11.落ちる音がした ページ11
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飲みかけの缶チューハイを、新山くんが持参してきた缶ビールにカツン、と当てた。うれしい。今日も帰らないと思ってたから、口元がゆるゆるになってしまう。新山くんにふははって笑われてしまった。
「変な顔！」
「だって嬉しいんだもん」
「はいはい、Aちゃんは何がそんなに嬉しいんですか〜？」
半分ほどのお酒ですっかり気持ち良くなってしまった。多分新山くんもそれに気付いてて、わざとからかうような、子供を相手にするような聞き方をしてくる。
もういいや、お酒のせいにして言いたいことぜーんぶ言っちゃえ！
「にーやまくんと一緒だから嬉しいんです〜」
「俺と一緒だとAちゃんは嬉しいんですか〜？」
「とっても嬉しいでーす」
「何で俺と一緒やと嬉しいんですか〜？」
何で、だって。そんなの決まってるじゃん。もう言う、言ってやる。だって新山くん、言わせたがってるもん絶対。
「新山くんのことが好きだから」
私の気持ちに気付いてたくせに、そんなぽかんとした顔しないでよ。ぐっと缶チューハイを煽り、その勢いのまま新山くんの唇を奪った。今日は新山くん、煙草の匂いしないね。ビールの苦味と、チューハイの甘味が混ざって変な感じ。
「……新山くん、すき」
「俺から先に言いたかったのに」
「新山く、」
ん、って言葉は空気と共に鼻から漏れた。すぐに離れてしまった唇を目で追いかけると、…エッロ、と新山くんが呟く。それはこっちの台詞だ。前髪の隙間から私を捕えて離さない、その瞳の方が──…
「A、」
「ん、…っ」
「俺もすき」
めっちゃすき、とそう何度も耳元で囁かれたらくらくらと目眩がする。多分、ちょっとお酒のせいもある。でも今はそれが心地良くて、新山くんの首に両腕を回しながら夢中でキスをした。
カラン、と空になったチューハイの缶が手から落ちる。あぁ、同じだ。私も今、完全に新山くんに落ちてしまった。
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作者名：あず | 作成日時：2024年2月12日 17時
