02.誰とでも出来るわけじゃないけど ページ2
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大阪に引っ越してきて、少しずつ関西弁にも慣れ始めた頃。職場の人と遊んだ帰り道に、新山くんの姿を見かけた。
「偶然だね、こんな所で。何してるの？」
「来週のライブのチケット手売りしてん」
時間あったら見に来ないか、と誘われたので二つ返事で了承した。代金を支払ってチケットを受け取り、会話もそこそこに新山くんと別れて帰路に着く。
「ほんまに見に来てくれるん？」
「だって基本暇だもん」
今日みたいにしょっちゅう職場の人と遊ぶ訳でもないし、そもそもこっちに友達いないし。そう言ってふう、と息を吐いた。ちなみにこの間買った新発売の銘柄は、三本くらい吸って引き出しの中にしまった。
「新山くんの漫才見るの楽しみ」
「なんか緊張するわ」
「初めてなんだけど一人で行っても浮かない？」
「一人の人多いし全然平気やで」
色んなやつ出るから楽しみにしといてよ。新山くんにそう言われると、途端に待ち遠しくなる。そういえば職場の人にもいた気がする。劇場に見に行ってるんだーって人。
「明日晴れるかなぁ」
「晴れるんちゃう？」
「適当に言ってるでしょ」
「あ、バレた？」
中身も何も無い、そんな新山くんとの会話が心地良かった。ちょうど吸い終わったしそろそろ部屋に戻ろうとすると、もう行くん？と呼び止められる。
「今日はせーへんの」
「…何を？」
何を、なんて分かってて聞く私もどうかしてる。自覚はある。ふーっと長めに息を吐いた新山くんが目でこっち来て、と催促しているような気がして足が向かってしまう。
「……していい？」
「聞かないでよ、」
ほんの少し、身を乗り出した新山くんとキスをした。もう何回目だっけ、キスするの。そんな事を考えながら、ゆっくりと離れていく唇を目で追ってしまう。
「新山くん、彼女いないの」
「居たらこんなことせえへんよ」
どうしてキスするの、とは聞けなかった。別にこれくらいの年齢になったら、ある程度清潔感があればキスくらい出来る。多分、私も新山くんも同じ考えなんだ。
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作者名：あず | 作成日時：2024年2月12日 17時
