10.大好きな君に贈る ページ10
.
今日は俺から誘ったし彼氏なんやから払うのは俺。と、断固として会計を譲らなかった新山くん。彼氏、という単語に反応すると新山くんはにんまりした。
「さすがにこの時間は冷えるな」
「2月だもん。夕方までが異常だったんだよ」
「来週もっと暑くなるらしいで」
「花粉やばいんじゃない？」
花粉、という単語を出すと最悪や…と新山くんが肩を落とす。やつの存在を思い出させてしまったらしい。ごめん。
「……あ、」
思わず、ショーウィンドウの前で足が止まった。…これ、このマフラー。新山くんに似合うだろうなって思ってたやつだ。突然足を止めた私に気付いた新山くんに、これ見て、とマフラーを指さす。
「これ絶対新山くんに似合うと思う」
「そうか？」
「うん、絶対」
ずっと新山くんを見てた私だからと、妙な確信がある。本人には言わないけど。ディスプレイされているマフラーを見上げていた新山くんが、…ええなぁ。と呟いたのを聞き逃さなかった。
新山くんの腕を引っ張って閉店間際の店に滑り込み、マフラーを購入する。すぐ使うので、と言ってタグを切ってもらった。店の外に出た瞬間、突然過ぎるやろ！と誰もが思うであろうツッコミをいれられる。
「……うん、やっぱり似合う！」
「いやまぁ、うん、ありがとう。嬉しい」
突然過ぎたけど。そう最後に付け足して新山くんはマフラーに触れた。スマホを取り出した新山くんに、A、と呼ばれたから自撮りだなと思って顔を寄せる。シャッター音を合図に体を離すと、たった今撮影した写真を見ながら新山くんが口を開く。
「俺にもマフラープレゼントさせてくれへん？」
「え、嬉しい。いいの？」
仕事の時つけてくマフラー気に入ってないんだよね、と話すとじゃあちょうどええやん、と新山くんが笑う。でももう閉まってる所が多い。次の休みは？と聞かれ、了承した。
「デートやな」
「…うん」
ふ、と新山くんが笑う。それにつられて、私も笑う。帰ろ、と言って新山くんが私の手を取った。…嬉しい。デートの約束も、こうやって手を繋いでくれるのも。新山くんとなら、何だって全部嬉しい。
「新山くん」
「んー？」
「大好き」
「俺も」
どちらからともなく歩みを止め、顔を近付ける。外だとか人がいるとか、この瞬間だけはどうでも良かった。新山くんのマフラーが視界に入る。……うん、やっぱりそれが一番似合ってる。
end.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 92人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あず(プロフ) - やぴ様 コメントありがとうございます！✨️きゅんきゅんしていただけて安心しました。一気読み嬉しいです！労いの言葉まで…ありがとうございます。番外編ものんびり更新していきますのでお時間のある時にまた読みに来てください！ (2月11日 9時) (
レス) id: de1b10e721 (このIDを非表示/違反報告)
やぴ(プロフ) - とても良い作品を書いてくださりありがとうございます✨最近また冷えてきましたので体調等にはお気をつけください。長々と申し訳ございません、番外編も楽しみにしています！♡ (2月11日 1時) (レス) id: f2f4556022 (このIDを非表示/違反報告)
やぴ(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。sykのお二人がとても大好きなのでこちらの作品一気読みさせて頂いたのですが、どちらのルートもとてもきゅんきゅんして最高でした…♡本編完結おめでとうございます、そしてお疲れ様でした！→ (2月11日 1時) (レス) id: f2f4556022 (このIDを非表示/違反報告)
あず(プロフ) - うゆーな様 コメントありがとうございます！大変失礼しました…ご指摘頂きありがとうございます。本当に申し訳ないです。。更新頑張ります…！ (2月7日 16時) (レス) id: de1b10e721 (このIDを非表示/違反報告)
＃うゆーな. - あと、本当にこの小説好きで！更新楽しみにしてます！！ (2月7日 14時) (レス) id: eb74aaaf07 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あず | 作成日時：2024年2月6日 22時
