30.揺れる心も露知らず ページ30
.
昨日残した仕事を早々に終え、午後のタスクにも手をつけ始めた頃だった。A、と石井さんに声を掛けられた。自分のデスクに戻る前に石井さんのデスクに寄り道すると、はいこれ。と、バインダーを渡された。
「何ですか？これ」
「追加の仕事」
「えっ」
「行くで」
え、ちょっと石井さん！スタスタと先に行ってしまう石井さんを仕方なく追い掛ける。渡されたバインダーに目を落とすと、見覚えのあるフォーマット。…備品の点検？何でまたこんな時期に。
「そっち何個ある？」
「えーっと……あれ、もう10個切ってます」
「やっぱなー……」
大小様々な電球を机の上にズラリと並べ、石井さんに言われるまま現在庫数と発注数を書き込んでいく。石井さん曰く、一ヶ月前から産休に入った派遣さんの業務引き継ぎが漏れていたらしい。
「数数えんのも大変やな」
「ですね」
「ごめんな、巻き込んで」
「何で謝るんですか。石井さんの頼みなら断れませんよ」
まぁ正確には頼まれてはいないのだが。どちらかというと、巻き添え？的な。
「……あ、そういえば」
「ん？」
リストの半分ほどのチェックが終わった頃、この間のことを改めて謝罪した。会議の準備を途中で石井さんに丸投げしてしまった、あの日のこと。すみませんでした、と頭を下げると「別にええよ」と石井さんは言葉を続けた。
「ほぼ終わってたし。A一人で出来てたよ」
「でも、」
「体調、もう大丈夫なん？」
こういう時、石井さんの声はひどく優しい。だから私は、体調悪いです、って石井さんに嘘をついてしまったことを後悔していた。ちくちくと、胸が痛む。だからといって、本当のことを石井さんに話せるわけではないのだけど。
体調は大丈夫か、の問いに対してとりあえず頷くだけで黙ってしまった私を不審に思ったのだろう。石井さんが「A」と、名前を呼ぶその声はやっぱり優しい。こんな風に、優しいとか優しくないとか今まで考えたこと無かった。石井さんの存在が、日増しに大きくなっているのが分かる。
「ほら、はよ終わらせて戻るで」
「……はい」
新山くんと石井さん。私が好きなのは、
▼同期の新山くん
見抜いて、心《niym》
▼先輩の石井さん
見抜いて、心《isi》
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あんこ(プロフ) - あずさん» お返事ありがとうございます✨ええ！そんなふうに言っていただいて嬉しいです😭しかも何回も読んでくださってるとは…！😳モチベーションになります！ありがとうございます！執筆頑張ってください！☺️ (2月7日 10時) (
レス) id: 262806c1af (このIDを非表示/違反報告)
あず(プロフ) - あんこさん» あんこ様 コメントありがとうございます！お名前を見て飛び上がりました。めくるめく日々もセピアに染まるも大好きです！！😭💙何回も読んでます。続きも頑張ります。ありがとうございます！！😭 (2月7日 7時) (レス) id: de1b10e721 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 初めまして。さや香大好きで夢小説増えないかなぁと思っていたところにあずさんの作品が目に入り一気読みしてしまいました！🩵🥳続きが楽しみです！✨ (2月7日 1時) (レス) @page31 id: 262806c1af (このIDを非表示/違反報告)
あず(プロフ) - もちゃん。さん» もちゃん。様 コメントありがとうございます！ありきたりな設定ではありますが楽しんでいただけて嬉しいです。最後まで楽しんでいただけるように頑張ります…！ (2月6日 7時) (レス) id: de1b10e721 (このIDを非表示/違反報告)
もちゃん。 - 初めまして。設定も文章も全てが素敵です…！！あまりコメントしないのですが、この作品が好きすぎてついコメントしてしまいました。更新頑張って下さい！楽しみにしてます！！ (2月6日 0時) (レス) id: 4493b39302 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あず | 作成日時：2024年2月4日 12時
