29.いつも通りが戻ってくる ページ29
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一度離れた唇が、もう一度重なるまで時間を要しなかった。一度目より、もっと長い。逃げるように顔を背けようとすると、新山くんは追い掛けようとする。まるで、ようやく捕らえた獲物を離すまいとする獣のように。
「……っだめ、」
「…あかん？」
そんなに熱っぽく囁かないで欲しい。じん、と耳朶が熱くなる。なけなしの理性でだめ、と再度呟くと新山くんはゆっくりと体を離した。…首、痛い。互いの体勢が違いすぎたから当然だ。
「ごめん、突然」
「……うん」
うん、としか返せなかった。……何か、気まずい。当然と言えば当然なんだけど……と、考えながら目線を上げると新山くんと目が合った。あ、駄目だ見てたらまた流される。咄嗟に顔を逸らして書類に手を伸ばす。まだ残っている仕事はあるけれど、どうも残業する気分にはなれなかった。明日、早く来てやれば良いか。
「駅まで一緒に行こ。遅いし送るわ」
「え？あ、いいよ先に行って、」
「俺が送りたいねん。送らして」
そんな風に言われたら、断れない。私は基本、新山くんの頼み事に弱いのだ。うん、じゃあ……お願いします。と、返事をしたら、荷物取ってくるからエントランスにおって！と、言い残して新山くんは去っていった。さっきまでのあのムードはどこへやら。
帰り支度をしながらふと、自分の唇に手を伸ばす。…新山くんとキス、しちゃったんだ。ここで。……石井さんに告白された、この場所で。
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翌朝。昨日残した仕事を片すために、いつもより早い電車に乗り込んだ。比較的空いているし、この時間にしちゃおうかな…でも朝早いしなぁ。そんなことを考えながら改札を抜けると、見間違えるはずのない背中を見つけた。
「新山くんおはよ」
「おはよ。早いな」
昨日のこともあるし、一瞬声を掛けるのに躊躇った。けど、新山くんの首元にあのマフラーがなかったから。全然似合ってなかった、あのマフラー。…別れた、ってやっぱり本当なのかな。
「A」
「ん？」
「今晩空いてたらさ、飯行かへん？」
あの時のお礼がしたい、そう言って新山くんが笑う。少し前に、新山くんに頼まれておつかいに行った時のお礼らしい。特に用事もないし、最近(昨日も)色々あったけど断る理由なんかないし……いいよ、と了承した。
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あんこ(プロフ) - あずさん» お返事ありがとうございます✨ええ！そんなふうに言っていただいて嬉しいです😭しかも何回も読んでくださってるとは…！😳モチベーションになります！ありがとうございます！執筆頑張ってください！☺️ (2月7日 10時) (
レス) id: 262806c1af (このIDを非表示/違反報告)
あず(プロフ) - あんこさん» あんこ様 コメントありがとうございます！お名前を見て飛び上がりました。めくるめく日々もセピアに染まるも大好きです！！😭💙何回も読んでます。続きも頑張ります。ありがとうございます！！😭 (2月7日 7時) (レス) id: de1b10e721 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 初めまして。さや香大好きで夢小説増えないかなぁと思っていたところにあずさんの作品が目に入り一気読みしてしまいました！🩵🥳続きが楽しみです！✨ (2月7日 1時) (レス) @page31 id: 262806c1af (このIDを非表示/違反報告)
あず(プロフ) - もちゃん。さん» もちゃん。様 コメントありがとうございます！ありきたりな設定ではありますが楽しんでいただけて嬉しいです。最後まで楽しんでいただけるように頑張ります…！ (2月6日 7時) (レス) id: de1b10e721 (このIDを非表示/違反報告)
もちゃん。 - 初めまして。設定も文章も全てが素敵です…！！あまりコメントしないのですが、この作品が好きすぎてついコメントしてしまいました。更新頑張って下さい！楽しみにしてます！！ (2月6日 0時) (レス) id: 4493b39302 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あず | 作成日時：2024年2月4日 12時
