26話 ページ26
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「はぁ〜〜·····っ」
「ため息でかっ」
ぷっと吹き出した後、あははってAの笑い声が
なかなかどうして、それがちっとも耳障りじゃないのは、
多分そうだ、いや、多分じゃない。全部、全部、隣にいる
·····そう、今もまだ笑い続けてるAのことが、
「·····あのさ」
「んー?」
俺が話を切り出そうとしたのを察したのか
缶ビールは片手に持ったままだけど、視線を画面から
こっちに向けたA。沈黙が続いても、気まずさなんかない。
さら、とAの前髪が流れ落ちて視界を遮っても、
それでもAは、俺を見てるんだ。ただ真っ直ぐに。
だから俺も、逸らさない。例え恥ずかしさが勝っても、だ。
「今度誰かと付き合うなら俺、Aみたいな奴にする」
「··········」
「Aみたいに····」
「何それ」
冷たい、それでいて怒気を孕んだような声音が
聞こえるのと同時、ガンッと勢いよくテーブルに
叩き付けられた缶ビール。
それから、
「私みたいな奴と、って何」
視界に広がるAの顔と、·····天井。
それを認識して漸く、頭で理解した。追い付いた。
突如変わった視界、両肩に掛かる重み、
俺は今、Aに押し倒されている。
押し倒された拍子に、ソファの手すりで少し頭を
打ったらしい。大袈裟なくらい後頭部が脈打つのと
同じくらい、ここも──心臓も、馬鹿みたいに速い。
「っ···私みたいな、じゃなくて、私と付き合いたいって言ってよ···」
絞り出したような言葉はどんどん小さくなって、
最後なんて、切なげな、まるでそれは聞いた事のない声で
ぎゅう、っと、左胸の奥の、ずっと奥が軋んだような音がした。
───こんなつもりじゃ、なかった。
いつもみたいに、何言ってんの、って
俺はAに笑い飛ばして欲しくて、
「ばか遼大·····」
俺はAに、
こんな顔、させたかった訳じゃ、
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azu(プロフ) - 香月なるさん» 最後まで読んで下さり、ありがとうございました!キュンとしてもらえて何よりです。他の作品も楽しんでもらえて、とてもとても嬉しいです。書き上げてよかったと心の底から思いました。本当に読んでくださりありがとうございました* (2020年3月5日 20時) (レス) id: b249351fd5 (このIDを非表示/違反報告)
香月なる(プロフ) - 初コメ失礼します!すっごくキュンキュンして最終話まであっという間でした!azuさんの書かれる作品全て大好きで文章がとても綺麗でよくこんなキュン死必至のシチュエーションが浮かぶんだろうって羨ましいし、尊敬です。これからも頑張って下さい!長々とすみません! (2020年3月4日 0時) (レス) id: 4194bddbe5 (このIDを非表示/違反報告)
azu(プロフ) - キルリさん» 最後まで読んで下さり、ありがとうございました!神だなんて最上級過ぎて恐れ多いですがありがたく頂戴します笑。コメントありがとうございました* (2020年3月3日 11時) (レス) id: b249351fd5 (このIDを非表示/違反報告)
azu(プロフ) - 菜々さん» 最後まで読んで下さり、ありがとうございました!出来る限りご本人に近づけようと四苦八苦したので、そう言って貰えて報われました。イベントの中止、残念でしたね。でも、少しでも気を紛らわせることが出来たのなら良かったです。コメントありがとうございました! (2020年3月3日 11時) (レス) id: b249351fd5 (このIDを非表示/違反報告)
azu(プロフ) - あいおばさん» 最後まで読んで下さり、ありがとうございました!翻弄されるいしばしさん、書いていてとても楽しかったのでそう言って貰えて嬉しいです。楽しんでもらえて何よりです。コメントありがとうございました* (2020年3月3日 11時) (レス) id: b249351fd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:azu | 作成日時:2020年2月15日 20時