寂しさを消してあげる ページ9
.
合鍵を取り出してガチャ、と鍵を開けた。
ドアノブを回すと、Aは玄関を入ってすぐの
キッチンに立っていた。あれ、耳馴染みの曲が流れてる。
これってNMBさんの、俺が初めて買ったCDじゃないか。
｢A｣
｢·····ええっ？！りょ、遼大くん？！｣
フライパンを片手に、何かを炒めながら
気持ちよくNMBさんを歌っていたAに声を掛けると
やっと気付いてくれた。当然、驚いている。
だよな、俺も逆の立場なら同じリアクションだわ。
｢え、っちょ、待って何で、｣
｢仕事早く終わってさ。驚かせようと思って｣
俺がそういう間にも、NMBさんが流れている。
それに漸く気付いたAが、はっとしながら
スマホを手に取って音楽を止めた。
｢いつも聴いてんの｣
A、アイドル興味ないって言ってたのに。
と、ちょっと意地悪を言ってみたら
Aは気まずそうな顔をしながら
フライパンに向き直った。あ、無視したな。
それにしても良い匂いだ。野菜炒めかな。
｢····聴くと、遼大くん思い出すから｣
｢え？｣
｢寂しい気持ちとか紛らわす時聴くの！｣
何だそれ、まじか。
ちょっと待って、そんな理由、
可愛すぎる。やばい、俺今すげぇにやけてる。
覚えるくらい、聴いてるってこと？
それはつまり、それだけ会いたいって
思ってくれてるってことだ。
暫く無言のまま、じゅうじゅうという
食欲をそそる音と香りの中、手のひらで口を覆っていた。
じゃなきゃ、緩みっぱなしの口を晒すことになるからだ。
｢俺の分ある？｣
｢急に来たから簡単なものしか作れないけど、｣
｢Aが作る飯なら何でも良いよ｣
だって全部美味いし。
そう続けて、棚から皿を1枚出した。
もうすぐ出来るから、その準備。
はい、とAに差し出したら
ありがと、って返ってきた。
｢ごめんな｣
｢え？何が、｣
俺が唐突に謝るから、
当然Aはきょと、として手を止めた。
｢寂しい思いさせてんだな、って思って｣
｢あ、あれは別に遼大くんを責めたつもりじゃ、｣
｢うん、分かってる｣
俺に会いたいと思った時、
その気持ちを紛らわすように
俺か好きな曲を聴いて過ごすなんて
何て、どうしてこんなにも、愛しいんだろうか、
｢──···一緒に暮らすか。俺たち｣
(君の寂しさが少しでもなくなるのならば)
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N(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいていました。そんなことがあったんですけね、、悲しいですが。。ありがとうございました！読めて良かったです！ (2020年3月11日 4時) (
レス) id: 80d05f879c (このIDを非表示/違反報告)
あいおば - そうなんですか…心中お察し致します…。いつも楽しませて頂いておりました。どうもありがとうございました。今までのお礼を込めて。 (2020年3月10日 14時) (レス) id: 6d6dcef09a (このIDを非表示/違反報告)
kurumikan212(プロフ) - お疲れ様でした！いつも楽しく読ませて頂きました。こらからは読者としてよろしくお願いします。 (2020年3月10日 12時) (レス) id: ff3c4dbaf4 (このIDを非表示/違反報告)
N4(プロフ) - お疲れ様でした。azuさんの書かれる作品はどれも素敵で、何度も何度も読み返したくなるほど大好きです。もう読めなくなってしまうのは残念ですが…。どうかお元気でお過ごし下さい！幸せをありがとうございました！ (2020年3月10日 11時) (レス) id: fdeaa7cc36 (このIDを非表示/違反報告)
Fumi(プロフ) - お疲れ様でした。素敵な作品を読ませて頂き本当にありがとうございました。これからはゆっくりなさってください。 (2020年3月10日 8時) (レス) id: a819d28f59 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：azu | 作成日時：2020年1月2日 1時
