・ ページ9
.
耐えきれなくなってチラ、と横目でAを見たら俺と目が合って嬉しいのかへへへ、とすっかり緩みきった顔を見せた。あーもう、何なんまじで可愛すぎるって！！！可愛すぎて腹立ってきた。眉間に皺が寄って行くのが分かる。
「見るやろあんなとこで寝てたら」
「別に見なくてもいいじゃないですか」
「そら俺も他の奴やったら見てへんよ」
「私だったから見た、ってことですか」
「そうやけど」
半ばヤケクソで全部ぶちまけてやった。もうえぇわ、知らん知らん。自分がどんだけ可愛い寝顔晒して寝てたか思い知ったらえぇねん。案の定あの投稿バズってたし。万バズやぞ万バズ。あーあ、Aの寝顔が世界中に晒されてもーた。俺だけ見れたら良かったのに。
「…何か言えや」
「や、だって…え？それって…」
黙りこくってしまったAを横目にちょっときつい言い方をしたのに、Aはさほど気にするでもなく歯切れの悪い言葉をぽつぽつと呟く。…何やねん、急に。Aらしくない。そう言ったら、Aはバッと立ち上がってその場から走り去ってしまった。一人その場に残された俺は、きょとんとしたままAが出て行った方を見る。え、なんで？俺なんかやらかしたっけ、
「……今のは石井が悪いで」
「は？どこがやねん」
離れた所から新山の声がした。そっちを見たら、新山以外の連中もこっちを見ている。いや、見てるやつとスマホを見てる振りしてこっちを気にしてる連中とが半々くらいか。
「お前、こんな全員がおる場で告んなよ。ムードもへったくれもない」
「はぁ？誰がいつ告ったって？」
「お前がついさっきここでAに告ってたやん。好きとは言ってないけど、あんなんもう好きや言うてるのと同じやで」
新山にそう言われて、徐々に落ち着きを取り戻した頭で冷静に振り返ってみる。数十秒後、事の重大さを理解した俺は柄にもなく助けを求めるように新山を見た。俺と目が合うなり、新山ははよ追い掛けろ、と言う。追い掛けて、ちゃんと好きって言え。その言葉を背に俺は駆け出した。
……ごめん、当たり散らすみたいな言い方して。もうちょい待っててな、A。恥ずいけど、ちゃんと言うから。
end.
ヤケクソになっちゃったisiさんのお話でした。不機嫌そうなisiさんがとても好きです。その雰囲気が少しでも伝われば幸いです…!
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 183人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あず | 作成日時：2024年3月16日 10時
