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「俺はAしか興味無いし」
「…ずっと断り続けてるのに？」
初めて新山さんに告白されたのは、二年くらい前だったと思う。その時は本当に、全然意識もしてなかったからビックリして断ったけど、それ以来ずっとだ。事ある毎に告白されたり、好きを言葉の端々に滲ませたり、…今だってそう。私を見つめる瞳が、私のことを好きだ、って言ってる。
「押して駄目なら押してみろって言うやろ」
「普通引くんですよ」
「引くわけないやん」
そう言って、新山さんがテーブルに肘をつきながらじっと私の顔を覗き込む。なんでも見透かされる気がして咄嗟に視線を逸らすと、新山さんの膝がこつ、と私の膝に触れた。
「…A、」
「っ…」
「俺のこと、もうとっくに好きやんな？」
下の名前で呼ばれたことと、恋心に気付かれていたことと、その両方ですっかり頭がパニックになってしまった。何か言いたいのに、口だけがはくはくと動くだけで言葉が出ない。
そんな私を見て、新山さんがふと笑った気がしてチラ、と視線だけ向けると、真っ直ぐな新山さんの瞳に捕らえられた。
「──好きやろ、俺のこと」
「な、…っなんで、そう思うんですか、」
「好きって顔してる」
咄嗟にしてない、と言おうとしてそれを止めた。どうしよう、もういっそのこと認めてしまった方が楽だろうか。私も新山さんが好きだ、って。好き、…すき。明確に、その感情が縁取られていく。あぁどうしよう、また新山さんに見透かされる、
「…キスしていい？」
「だ、だめ」
「あかんの？」
「だってここ楽屋、」
「したい、って顔に書いてあるけど」
どうしよう、全然思考がついて行ってない。何も考えられない。逃げるように両眼をぎゅっと瞑ると、ちゅ、と頬に何かが触れた。慌てて目を開けると、さっきより近いところに新山さんの顔がある。え、今……頬を押えて思わず身体を逸らすと、にんまりした新山さんが私を見ていた。
「口の方が良かった？」
「〜〜…っ、」
思わず、頷きそうになった。それもこれも全部、新山さんの手の上のような気がする。……悔しいけど、もういい加減認めよう。葛藤の裏に隠れていた、新山さんへの恋心を。
end.
押して駄目なら押してみろ精神のniymさんに翻弄されるお話。リクエストありがとうございました!
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作者名：あず | 作成日時：2024年3月16日 10時
