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刻んだ材料と挽肉を炒めて、カレー粉とその他調味料で味を整えていたらえぇ匂いするーと、リビングから声がした。火を止めてチラ、と炊飯器を見るとあと10分と表示されている。我ながらタイミングバッチリだ。
「新山くーん、スプーンとか運んでくれる？」
サラダも作ったからドレッシングも運んでね、と付け足すと返事をしながら再び新山くんがキッチンに現れた。言わなくても場所は分かっている筈だから何も言わないでいると、後ろから抱きつかれてしまった。
「…今日の新山くん、なんか変だよ？」
「別にぃ」
「いつもこんな風に甘えたりしないじゃん」
「俺が甘えたらあかんの」
拗ねたような言い方に、思わず胸がぎゅっとした。かわいい。顔見えないけど、多分今唇を尖らせてると思う。駄目じゃないけど、と言うと両腕の力が強くなった。
「A、」
「ん？」
意識を、背後にいる新山くんに集中させる。耳元で聴こえた新山くんの掠れた声に、さっきからずっと心臓がうるさいままだ。
「こっち向いて」
「…っん、」
熱い吐息と、甘い声色が鼓膜をじんわりと震わせた。おずおずと振り向くと、真っ直ぐな新山くんの瞳に目を奪われる。暫し見つめ合って、目を閉じて。キスを交わすのが、まるで自然なことのように思えた。
「…ごめん、止まらんわ」
「に、…っやまくん、」
いつの間にか、私たちは向き合って互いの唇を求めていた。わざとらしく音を立てたり、触れ合わせるだけのキスを繰り返したり、かと思えば角度を変えながら何度も深く、深く。──すぐ側で、炊き上がりを知らせる電子音が鳴り響く。出来たよ、食べよう。そう言いたいのに、私の口からこぼれ落ちるのは熱い吐息と甘い嬌声ばかりだった。
end.
料理中にちょっかいをかけるniymさんのお話でした。彼らが食事にありつけるのはまだまだ先のようです。リクエストありがとうございました!
毎秒ごと伝えてみせようか＿niym→←きみがとびきりのごちそう＿niym
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作者名：あず | 作成日時：2024年3月16日 10時
