きみがとびきりのごちそう＿niym ページ41
リクエスト作品 ／ 同期
チラ、と時計に目配せしてそろそろ帰ってくるかな、と思いながら冷蔵庫を覗き込んだ。…何作ろうかな。挽肉があるからハンバーグ？でもこの間作ったもんなぁ。
「……あ、来た」
インターフォンの音が鳴るなり、冷蔵庫の扉を閉めて玄関に向かった。鍵を開けてドアを押し開けるとただいま、と新山くんの声がする。
「おかえり。まだ外明るいね」
「日落ちるのもだいぶ遅なったよなぁ」
靴を脱ぎながら、アウターミスったわぁと新山くんが言う。私の家だけど、勝手知ったる様子でリビングへと消えていく新山くんの背中を見送ったあと、私は再び冷蔵庫の扉に手をかけた。
「キーマカレー食べる？」
ひき肉、玉ねぎ、人参、舞茸を並べてリビングを覗き込む。すっかりソファでくつろいでいる新山くんが振り向いて、食べる！と声を弾ませた。あ、今のちょっとかわいい。思わずふふふ、と笑みがこぼれた。
「作れんの？」
「普通のより簡単だよ、煮込まなくていいし」
皮を剥いてみじん切りをしていたら、ひょい、と新山くんが姿を現した。特に気にもせず手を動かしていたら、いつの間にか隣に立っていた新山くんが手元をじっと見つめている。
「…なに、どうかした？」
「前から思ってたんやけど、Aって料理上手よな」
「ただみじん切りしてるだけだけど…」
言われて悪い気はしないけど。手を止めてやや首を傾けながら新山くんの方を見ると、じっと見つめる瞳に捕らえられた。──あ、これは。そう思った瞬間、ちゅ、と唇が触れて離れていく。
「…包丁使ってる時はだめ、」
「それ以外の時ならえぇの？」
ふ、と笑った新山くんが去り際に頬を撫でていく。なに今の。反則なんですけど。
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作者名：あず | 作成日時：2024年3月16日 10時
