知らない熱に浮かされる＿isi ページ37
リクエスト作品 ／ 幼馴染 ／一般人夢主
いつだって、誠ちゃんは優しかった。優しすぎるくらい優しかった。言葉はちょっと乱暴でも、その奥にある優しさを知ってるから怖くなかった。
『わたし、おおきくなったらせいちゃんとけっこんする！』
『えぇよ、約束な』
そう言って笑った誠ちゃんの顔を、今でも鮮明に思い出せる。兄妹みたいに育った誠ちゃんのことを好きになるのは当然の流れで、もうずっと私は誠ちゃんに恋をしている。この春から大学生になった今も、だ。
「サークルとか入ったん？」
「うーん…まだ悩んでてさー」
誠ちゃんは、お笑い芸人さんになっていた。それでも私たちの関係は変わってなくて、今日みたいに家に来ては部屋で一緒にダラダラと過ごすこともあった。
「変なとこ入ったらあかんで」
「変なとこ？」
「あるやろ、色々」
口篭る誠ちゃんを見て、何となく察しがつく。大丈夫入らないよ、と伝えると誠ちゃんはほっと胸を撫で下ろした。こういうとこ、全然変わってないなぁ。昔から何かと私のことを心配してくれて、前に友達からあんたの幼なじみ過保護過ぎひん？って言われたこともあったっけ。
「…何笑ってんの」
「ううん、誠ちゃん優しいなーって思っただけ」
「別に普通やろ。A危なっかしいし」
「もう大学生なんだから平気です〜」
ほんとは、嬉しかった。会う機会も、一緒に過ごす時間も減ってしまって寂しかったけど、誠ちゃんは誠ちゃんのままやったから。──過保護すぎる、私の幼なじみ。でもそろそろ、幼なじみの枠を超えたい。私はそう思っていた。
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作者名：あず | 作成日時：2024年3月16日 10時
