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士彦くんは大学生になると同時に家を出て、一人暮らしをするようになった。だから全然会えなくなって、寂しさだけが募っていく。連絡先は知っていたけど、自分からは何も送らなかった。…ちがう、送れなかった。興味本位で士彦くんのSNSを見つけたけど、まるで別世界に行ってしまったような、いつも隣にいた士彦くんが遠くに行ってしまった気がして見るのをやめた。
『俺と付き合ってよ』
『…うん、えぇよ』
士彦くんへの恋心を抱いたまま、隣のクラスの子と付き合ったことがある。でも結局、長続きしなかった。悪いことしたな、と思ったけどこの頃の私は恋愛に対してとても冷めていた。正直、士彦くんへの恋心もこの時消えてしまったと思っていたしこのまま一生誰も好きにならずに生きていくんかな、とかそんな突拍子もないことを考えていた。
──なのに、このザマだ。士彦くんを見ただけで、簡単に心がときめいてしまう。ときめくのと、何故だかとても切ないのと、相反する感情がせめぎ合っていた。
「なんかちょっと、雰囲気変わった？」
「…服とか髪とか適当やから、」
恥ずかしくて俯くのに、結局士彦くんの顔が見たくて視線を上げてしまう。目が合うと、士彦くんは適当ちゃうやん、と言いながら一歩、また一歩歩み寄ってくる。
「大人っぽくなったわ、うん」
「そう、かな」
「そこのコンビニ行こうとしてたん？」
私がうん、と頷くとじゃあ一緒に行こう、と誘ってくれる。断る理由なんかどこにも無かったから、もう一度頷いて士彦くんと一緒にコンビニで買い物したあとそのままの足で家に来てくれた。お母さんは久しぶりねぇ、と言いながらあたたかく士彦くんを迎え入れ、…今現在、士彦くんは私の部屋にいる。
「………」
「………」
何となくソワソワしてしまって、無言のまま数分が過ぎた。自分の部屋なのに、全然落ち着かない。チラ、と士彦くんを見ると士彦くんは懐かし、と呟きながら私がさっきまで見ていたアルバムに手を伸ばした。
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作者名：あず | 作成日時：2024年3月16日 10時
