誰にも言えない秘密。2 (ページ34)

今日:48 hit、昨日:101 hit、合計:38,202 hit

・ページ34

.

──二年前の冬の日、私は士彦くんにキスされた。はじめての、…ファーストキスだった。

『……な、んで？』
『…したかったから』

国立大に合格した士彦くんに、勉強を教えて貰っていた時だった。問題から顔を上げて士彦くんを見たら、直ぐそばに士彦くんの顔があって最初は何が起きてるのかさっぱり分からなかった。…あ、私のファーストキス……そう思った頃にまた、唇が触れて離れていく。

『…ここ、間違えやすいとこやけど落ち着いてやればAなら出来るから』
『士彦くん、』
『ごめん、今日は帰るわ』

バタン、と閉じるドアの音がいつもよりやけに大きく聞こえた。一人になってようやく、士彦くんにキスされたことを理解してベッドに倒れ込む。指先でそっと唇に触れると、キスの感触がリアルに蘇ってくるようだった。

なんで、なんで、…どうして私にキスしたん？…私のこと、好きなんかな。好きでもない人とキス、するんかな。士彦くん、なんで。この日以来、私の頭の中は士彦くんでいっぱいになってしまった。

・
・
・

『…A、』
『士彦く、…ん、』

私のこと好きなのとか、どうして今も私にキスするのとか、聞きたいことは山ほどあった。なのに私は、いつも流されるままのキスに夢中になっていた。小テストで100点取れたらとか、期末でクラス10位内に入れたらとか、そんな理由を付けて数え切れないくらい、何回もした。

『Aってさ、付き合ってる奴とかいんの』
『…いないけど』

士彦くんの意地悪な質問に、いちいち胸を痛めていた。私に散々キスしておいて、こんな事平然と聞いてくる士彦くんが嫌いだった。…クラスの男子なんて、全然眼中に無い。こう思うのもぜんぶ、士彦くんのせいだ。恨めしい。そう思うのに、キスされたらそれらが全て溶けて消えていく。そしてそこには、好きという気持ちしか残らない。いつの間にか、私は士彦くんに恋していた。きっとこれが、初恋だった。

→