視線以外も絡ませて＿niym ページ4
社会人パロ 上司niymさん×部下
「すみません、遅くなりました！」
個室の扉を開けながらいそいそと中に入ると、各方面からお疲れ、お疲れ様です、と声が掛かる。注目されるのが苦手な私は、ぺこぺこと頭を下げながらAさんこっち、と促されるまま掘りごたつ席に腰を下ろした。
「お疲れ」
「あ、お疲れ様です新山さん！」
「プレゼンどうやった？」
向かい側の席に座っていたのは、上司の新山さんだった。思わず、どきりと心臓が跳ねるのも無理はない。…誰にも言ったことないけど、私は新山さんに絶賛片想い中だ。取引先から直でこの飲み会に合流した私は、早速新山さんに報告しようとするが隣から「まぁまぁそれより先に飲み物は？」と尋ねられる。
「あ、えっと…」
「Aはジンジャーエールやろ？」
「何で分かったんですか」
「いつも飲んでるし」
こんな些細なことで舞い上がるくらいには、新山さんのことが好きだ。でも誰だって舞い上がると思う。好きな人が自分の好みを知ってくれてたら、嬉しくて仕方ない筈だ。気を緩めるとにやけてしまいそうなので、バレない程度に唇にぐっと力を入れてみる。…あ、やっぱり駄目だ笑ってしまう。おしぼりでそっと口元を抑え、何とかその場をやり過ごす。
「じゃあ改めて、全員揃ったので乾杯し直します！みなさんお疲れ様でしたー！！」
幹事の声を合図に、各々のグラスが色んな場所で音を立てる。私も周りの人達と乾杯をし終えたあと、最後の最後に新山さんのジョッキとグラスを交えて喉を潤した。
「はーー…商談を終えたあとの一杯って格別ですよね…」
「その感じやと上手くいった？」
「手応えは十分です！」
元気よく答えると、ふと新山さんが笑ってくれた。仕事終わりで、ちょっと気だるげな新山さんにときめきが止まらない。スーツに眼鏡、少しだけ乱れた髪も色っぽさを助長している。はぁ…と思わずため息が零れてしまった。
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作者名：あず | 作成日時：2024年3月16日 10時
