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「私が新山くんのスーツ姿に弱いの知ってるでしょ」
「うん、知っとる」
これはもう、付き合う前からずっと繰り返し言っていた。似合い過ぎてる、と。画面の中の新山くんのスーツ姿も好きだし、今隣にいる新山くんのスーツ姿もどっちも好きだ。でもやっぱり、隣で見られる方が好きかもしれない。いや、画面の中の新山くんも……
「Aー、顔ヤバいで」
「…ヤバくないです」
「ゆるっゆるやった、マジで」
……恥ずかしいけど、ゆるゆるなのは認める。引き締めるように口元に力を入れて、きゅっと結んでみるけど結局隣にいる新山くんを見て緩んでしまう。
「あーーもうだめ、スーツが悪い」
「俺やなくてスーツなん？」
「うん、スーツ。スーツが全部悪い」
本当は、スーツが似合い過ぎてしまう新山くんがいちばん悪い。何回見ても、格好良いと思わせる新山くんが。チラ、と横目で新山くんを見るとすぐに目が合って、ん？と小首を傾げてみせた。あ、今のは可愛い。
「……新山くんってほんとずるい」
「え、今のは全然分からんかった。何が？」
「無自覚なのがまた…… 」
基本格好良くて、時々可愛いとこも見せてきて。一体この人は、私をどうするつもりだろう。どんどん沼にハマっている気がする。新山士彦という底なし沼に。
「………」
「…なに、どうしたん急に黙って」
新山くんの声を無視して周囲を見渡した。各々がスマホに夢中だったり、私たち二人の事を特に気にするでもなく雑談している。…よし。私は新山くんの方を向いて、緩んだネクタイに手を伸ばした。グッとそれを掴んで自分の方へ引き寄せ、ちゅ、と唇を押し付ける。
「……………は？」
「……しちゃった」
呆気に取られる新山くんを見て、珍しいなと思った。思わずもう一度したくなったけど、場所が場所なだけに我慢せざるを得ない。なのに、スッと目を細めた新山くんの顔が近付いてきて、あっという間に唇を奪われた。
「…もう一回したい、って顔してたで」
あぁもう本当にこの人は。…ずるいよ、新山くん。
end.
昨日放送された某トーク番組を見て衝動的に書いてしまいました…!
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作者名：あず | 作成日時：2024年3月16日 10時
