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シン、と静寂が室内を包み込む。私は頭の中で、たった今にーやんが口にした言葉を繰り返していた。付き合ってみる、って……え？私が、にーやんと？
「じ…冗談、だよね？」
「本気やけど。…あかん？」
「え、だって……にーやん、その…私のこと…」
好きなの、とは聞けなかった。私を見る瞳が、あまりにも真剣だったから。本気なんだ、って分かったから。一気に身体が熱くなった。顔も、絶対赤い。
「Aのこと、ずっと好きやった」
「っ、」
「流れで言ったみたいに思ってるかもしれんけど、俺本気やから」
夢にまで見た両想いだ。想いが実る瞬間って、こんな感覚なんだ。賞レースで勝つ時とは、全然違う高揚感で満たされていく。気持ちが昂って、私も、とひとりでに言葉が溢れていた。
「私も、にーやんが好き」
それを聞いたにーやんは、眉尻を下げて柔らかく微笑む。それからすぐ、微かな煙草の香りに包まれた。示し合わせた訳でもないのにほんの少し身体を離し、まるでそれが自然なことのようにキスを交わす。ちょっとだけ、苦い。でも何でだろう、もう一回とねだってしまうのは。
「かわいい」
「…だめ？」
「えぇよ、」
ちゅ、ちゅ…っと触れ合わせるだけの、子供みたいなキスを夢中で繰り返す。段々と角度が付き、あ、まずいかも…と頭の片隅でなけなしの理性がそう呼びかけた瞬間、コンコン、と外からノックの音がした。互いに慌てて身体を離すと、もう終わったー？と溌剌とした相方の声がする。
「助かったわ」
「…何が？」
「止まる気せんかった。…Aが可愛すぎて」
そう言い残して、にーやんは立ち上がりドアを開けた。入れ違いで入ってきた相方に、あんた凄いことなってるよ、と告げられる。凄いこと…………
「……あ！！！！！！」
そうだった、すっかり忘れてた！！ちょっと記憶が定かじゃないけど、さっきのライブ配信の終わり方……！！！
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作者名：あず | 作成日時：2024年3月16日 10時
