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「…あ、始まってます？大丈夫かな。こんばんは、Aでーす」
画面に向かって手を振りながら、流れてくるコメントに目を通す。いくつか拾って会話を広げていると、突然ドアが開いた。思わず顔をそちらに向けると、にーやんがいて「あ、ライブ中やった？」なんて呑気に声を掛けてくる。
「いやいや、外にインスタライブ中！って張り紙してたじゃん」
「気付かんかった。俺も混ざろ」
「絶対うそ！…まぁいっか。はい皆さん、飛び入りゲストのご紹介です。にーやんでーす」
どうもさや香の新山ですー。と、隣に座りながらにーやんが言うと、視聴者数もコメントの量も一気に増える。追うのが難しくて画面を注視していると"二人は付き合ってるんですか？"というコメントが目に留まった。しかもそれを、あろう事かにーやんが拾ったのだ。
「何でそれ拾うんよ」
「いや、ほらめっちゃ来るやん」
「にーやんが読むからでしょ！」
案の定、コメントがそれ一色になってしまった。"Aちゃん絶対にーやんのこと好きだよね"とか"二人は絶対両片想い！！"とか。思わずジト、とにーやんを睨んでしまった。どう収拾するつもりですかね、この人は。
「俺とAってお似合いですか？」
「ちょっとにーやん、何聞いてんのよ」
「俺らのことよく見てくれてる人に聞いたら参考になるかなって」
「何の参考にするの」
そう聞くと、にーやんは楽しそうににんまりした。あ、これは言わないやつだと瞬時に分かる。
「…ほら、めちゃくちゃお似合いやって」
にーやんにそう言われて、流れてくるコメントに目を落とす。"むしろ付き合ってないなんて嘘ですよね？！"、"今日から付き合うべき！！"、"お似合いすぎるから早く付き合って"…みんなさあ、言うのは自由だけど………チラ、と画面からにーやんに視線を移すとガッツリ目が合ってしまった。真剣な、にーやんの目と。
「……付き合ってみる？」
「へ？」
──ライブ配信は、ここで終了した。にーやんが終わらせたのだ。
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作者名：あず | 作成日時：2024年3月16日 10時
