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もやもやとざわざわと、何だか気持ちがすっきりしないまま日々が過ぎていく。やがて季節が冬から春になろうとしている頃、私たちの関係は突如終わりを迎えた。
「結婚すんねん、俺」
噂話を他人から聞くより、ずっと現実のものとして受け止められた。今の今まで、新山と何を話していたか忘れるくらいの衝撃はあったけど。そして私が、今どんな表情でいるのかも分からない。変な顔、してないといいな。…新山には見せたくない。
「そっか。おめでとう」
「…ありがとう」
ねえ新山、私今上手く笑えてるかな。誤魔化すのも嘘っぱちの笑顔を貼り付けるのも、大人になると自然と上手くなると思ってたけど、これって結構しんどいんだね。
「結婚式、絶対招待してね」
「来てくれんの」
「…同期じゃん、私たち」
込み上げてくる何かに気付いて、ふいと顔を逸らした。…駄目、駄目だよ絶対だめ。ここで泣いたら全部駄目になる。咄嗟に下唇を噛み締めたら、ピリッとした痛みが走った。じわりと口の中に広がる鉄の味に、思わず眉を顰める。
「A、」
出会ってから今まで、ずっと下の名前で呼んでくれてたね。今になって気付いたよ、それがとても嬉しかったんだって。新山の彼女は、あんたのこと何て呼んでるのかな。下の名前で呼ぶの？士彦、って呼んでるのかな、
「……ひとつだけ、我儘言ってもいい？」
「えぇよ、なに？」
新山の眼差しが、その声が、優し過ぎて苦しかった。気付くのがあまりにも遅すぎた。時間を巻き戻せたなら、キスだけの不健全な関係を始めなかったかもしれない。こんなに苦しい思いをするなら、始めなければ良かった。
「これで最後にするから、」
…士彦、と声には出さずに心の中でそっと囁く。首に腕を絡めて口付けると、新山は難無くそれを受け入れた。…悪い人。婚約者がいるのに、ただの同期とキスするなんて最低だよ新山。…ごめんね、我儘を聞いてくれてありがとう。
「A、俺、」
「…幸せになってね、新山」
これまでなら余韻に浸って何度でもキスを交わすけど、最後って決めたから。新山の言葉を遮って身体を離す。今の言葉は、嘘偽りない私の本心だった。どうか、幸せになって欲しい。隣にいるのは、私じゃないけれど。
end.
お題箱から素敵なネタをいただきまして、許可を貰って書きました。ありがとうございました…!
君にだけ届けばいい＿niym→←ブライダルベールを君に贈る＿niym
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あず(プロフ) - りほさん» りほ様、コメントありがとうございます！申し訳ございません、リクエストはsykのみ受け付けております…！skmtさんを書かれている素敵な書き手様は沢山いらっしゃるので、そちらにお願いされると良いかと思います🙇♀️ (3月13日 20時) (
レス) id: de1b10e721 (このIDを非表示/違反報告)
りほ - 可能であればﾏﾕﾘｶ阪本くんお願いします。 (3月13日 19時) (レス) id: 699054d884 (このIDを非表示/違反報告)
あず(プロフ) - こっちさん» こっち様、コメントありがとうございます！isiさんの作品を褒めて貰えてとっても嬉しいです🥲🤍片方に偏りがちなのでもう少し頑張って書きますね…！またぜひ読みに来てください〜！ (3月13日 18時) (レス) id: de1b10e721 (このIDを非表示/違反報告)
こっち(プロフ) - はじめまして。たまに書いてくださるisiさんがほんとにステキで毎回キュンキュンしてます✨✨これからも応援してますね🖐️ (3月13日 1時) (レス) @page44 id: c0844398d9 (このIDを非表示/違反報告)
あず(プロフ) - まめさん» まめ様、コメントありがとうございます！わ〜〜嬉しいです…！🥲🤍励みになります。もっと刺さるお話が書けるように頑張ります🌟 (2月25日 12時) (レス) @page7 id: de1b10e721 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あず | 作成日時：2024年2月23日 10時
