よくあること ページ5
及川徹と名乗った彼は、通りすがる女性達が息を呑むほどに顔立ちが整っている。
そんな彼が何故か、隣を歩いている。
「なに?」
「ん?」
「及川さんの顔ちらちら見てたから。何かあるのかなーって」
どうやら態度に出てしまったらしい。
指摘されたことに申し訳なさを感じながらも、いい機会だと口を開く。
「私を、待ってたんですか?喫茶店で、おかわりとかも、どうしてですか」
「それ聞いちゃう?んー、まぁ、聞くよね。俺も同じことされたらそれ聞くし」
するりするりと出てくる言葉は蛇口を開けた水道水のように連続的に流れ出る。
「まず、常連だったあんたらが付き合ってたの知ってて、その男が正々堂々浮気してるのが気に食わなかったんだよね」
「浮気なんて、よくある事じゃないですか」
「まぁ、そうだね。死んだことになるのは殆どないと思うけど」
からかい口調の彼の言葉は、とても痛いが慰めの言葉なんかよりとても気が楽に感じる。
今日初めて喋ったような関係ということも、
神妙にならずそばで笑う彼がありがたく思える。
「それにね、」
けらりと軽快に笑っていた彼の笑みが、
おもちゃを貰って感動する子供のように、
底から喜んでいるかのように、
嬉しそうに笑った。
「やっと、俺の好きな人が恋人と別れそうなんだよ?これに便乗して、つけ込むしかないじゃん」
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作者名:島ぞうり | 作成日時:2017年5月7日 21時