どうやら私は死んでいたようです。【及川徹】 (ページ28)

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過去編:楽のしいか？ページ28

中学3年生の夏、伊達工業高校体育館。

その日は、伊達工へと進学した先輩に誘われて、高校生に紛れてバレーをしていた。

運の悪いことに中学のチームメイトは自分以外はいなかった。

慣れない環境。

持ち前のコミュニケーション能力を発揮して先輩達に溶け込めたのは良いものの、ボールの打点調整は難しい。

「やばっ！」

アウトコースから入ってくる人へ上げたボールは、ボールを撃ち落とそうとする手を掠めて自分のコートの地を跳ねた。

「スンマセン！！」
「イヤイヤ！初めて合わせたしイイって！寧ろタイミングが完璧でびびったわ！！お前スゲェよ！次はもう少し低めで頼むな！」

青柳と名乗ったその人は、明るい笑みを浮かべてフォローをくれる。

「...ありがとうございます」

そのフォローが心を抉った。

後輩から来る大きなプレッシャー。

アイツなら、こんなの簡単に合わせてしまうんじゃないだろうか。

せっかく忘れていた嫉妬や不安がどろどろとせり上がる。

トスをあげる事に気道がキュッと閉まって行く気がした。

最もっと正確に。

先輩達に求められるトスを。

あげなければ______

ボールが、大きな音を立て相手コートの板張りの床を跳ねた。

「及川さ、」

喜ぶチームメイトを背にして、得点を決めた青柳が落ち着いた声で名前を呼ぶ。

「お前、バレーやってて楽しいか？」