よろしく ページ25
「Aさん、俺と付き合ってくれる？」
あざとく、けれど何処か不安げに首を傾げる及川は、子供っぽい。
付き合ってください。と言わずに疑問符で投げかけるのは彼の小さな不安を感じさせた。
「そのお付き合いは、恋愛的な交際のことであってますか？」
「うん、恋愛的なお付き合いのことであってます」
このやり取りはまるで、最初に告白を受けたときのよう。
お互い畏まって敬語になるのはどうしてだろうか。
けれどあんまり悪い気はしない。
「保留でお願いします」
「え゛っ！？なんでっ！？」
ひしゃげた声で慌てる及川を初めて見た。
「だって私達、お互いのことあんまり知らないでしょ。もし付き合って、やめておけば良かったってあなたに思われたくないし、私も思いたくない」
彼の新たな一面を見る機会は増えるだろうか。
「もし、これがあなたの恋心を傷つけてしまうなら、嫌なら、他の案を考えてみるけど。もし大丈夫なら、交際を前提にお友達からはダメですか」
きょとんとした顔が、麻痺したようにゆっくりと口を動かす。
「Aさんって、ほんと自分が納得いかないことしないよね。しかもちゃんと俺の事考えてくれてるし。うんうん、最初は衝撃でかかったけど、それなら嫌じゃないよ！寧ろ俄然やる気でた！」
からりと笑う彼は好青年で。
「Aさんは、俺のこと好き？」
「...好きだよ」
真剣な表情を見つめる彼はどこまでも真っ直ぐで。
「恋愛的な意味で？」
「人としても、恋愛的な意味でも。好きだよ。だから、出来ることはら、この想いは大切にしたい」
「そっかそっか」と、満足気に口角をあげる彼を、
「俺もだよ。俺も人としても異性としても(名前 )さんが好き。俺も大切にしたい。」
愛おしいと思うのは、仕方のないことだろう。
「だからね、色々教えてよ。Aさんのこと。俺ね、聞きたいこと沢山あるよ。誕生日も、好きなこととか、今どんなことしてるのとか、色々。俺もね、聞いて欲しいことが沢山あるんだ」
無邪気に笑う彼につられて、
「私は、AAです。22歳工学院の1年次です。よろしくお願いします、とおるくん。私は、とおるくんの名前の漢字を教えて欲しいです。」
顔がゆるりと解けたのが、自分でもわかった。
.
その一年後に、願掛けをした人から「元カノとの復縁」を知らせるツイートが流れて来ることとなる。
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作者名：島ぞうり | 作成日時：2017年5月7日 21時
