銀の川 ページ4
この人の名前はなんて言うんだろう?
ふと、疑問が浮かび上がる。
気になりベンチに座る彼に、
「お名前は、なんて言うんですか?」
と言うと、
しばらくして「…ジン。」と言う答えが返ってきた。
ジンさん。
「…響きが良い名前ですね」
「…そうかよ」
ジンは、ぷいっと目を逸らした。
そういえば、お酒にジンってあった様な。
それとも、陣って漢字を使った名前なのかな。
どちらにせよ、かっこいいなぁ。
そう思っていると、
隣に座って居たジンは黒いコートのポケットから
タバコの箱とライターを取り出し、
箱にある一本のタバコを摘み出して火をつけた。
咥えられたタバコの先端から、
じんわりとした火色と、薄灰色の煙が広がる。
また秋の風が吹き、煙を裾の様に揺れ動かす。
それと同時にジンの綺麗な髪も靡くのだ。
その様子はまるで、
秋風に靡く銀の川だと。
Aは感じられたのであった。
「綺麗」
その三文字を呟きながら、
瞳に映し出された銀の川をじっと眺め続けると、
ジンはタバコの煙をふっと、吐いた後
Aに聞かれるか否かの声で囁いた。
「…Aの瞳も十分綺麗だろうが」
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作者名:がぶぅ | 作成日時:2023年5月10日 22時