愛しい声 ページ23
副作用が少ない抗がん剤だと聞いていたけど、
私の体には合わなかったようで、わたしは酷い吐き気と激痛と
口内炎がひどくて何も食べられず飲めず、クリーンルームで一人
うなされていた。
そしたらふーっと呼吸が楽になって、どんどん体が重く、
ベッドに沈み込んで行くような感覚。
あ………わたし、死んじゃう………
薄れて行く意識の中で、変に冷静になってる自分がいた。
どこからか、声が聞こえた。
A…
A………
お姉ちゃん……………
誰？
オンマ？
アッパ？
もう、苦しまないで………
こっちにおいで……………
嘘だ、オンマやアッパが、そんな事言うわけない。
でも、声の方に行こうとすると、なんだか体が軽くなる気がする。
もう、行ってしまおうか。
ここにいても一人だし…
そう思って歩き出そうとした時、後ろから声がしたの。
すごくすごく、愛しい気持ちになる声。
私が大好きな歌を唄ってくれて……
その歌を聴くと、なんだか自分が凄い人になったみたいで
大きな愛で包まれたみたいな幸せな気持ちになるの。
そしたらピタッと歌がやんで、もう一度聴きたいって思った瞬間
目が覚めた。
虚ろな目で周りを見渡すと、わたしの周りで先生や看護師さんたちが
ホッとした顔してて…
目を外に移すと、ガラス越しにユイが涙をいっぱい流して泣いてた。
ああ、わたし、生きてた……………。
しばらくして落ち着いてから、ユイがドンへに伝えるって言ったから
わたしは言わないでって頼んだ。
そばにいるって言ってくれたけど、現実にはそれはとても無理な事で。
余計な心配もかけたくなかったし、
この事を知ったドンへが冷静にステージをこなせなくなりそうなのは
明らかで、とても言えないと思った。
今までだって、何ヶ月も会えない時もあったのに、
こんな風に心を通わせてしまったら、今まで以上に離れていることが
辛くなってしまうなんて…
早く会いたい。
生きて、生きて、ずっとずっと、生きて行きたい。
わたしは、欲張りなのかな…
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作者名：さくらこ
x他1人 | 作者ホームページ：http://id41.fm-p.jp/390/cherryhae15/
作成日時：2013年3月9日 10時
