夜の海、朝の月 ページ32
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「はぁー、開放感」
「はぁーが続いてますねお兄さん」
「海見るとはぁーって言いたくなりません？」
「ちょっと分からないけど今のぶっ飛んでる吉野なら言いかねないかもね」
そう言いつつも、ちょっと大きめの流木に“はぁー”って言いながら俺と並んで座るAさん。
やっぱり出るじゃん、はぁーって。(笑)
「で？何かあったの？」
「？別に特にないですよ」
変なとこでロマンチスト出たのね、とAさんは海に向かってカメラを向ける。
はぁー、なんかさ、
「月が綺麗ですね」
「……。」
「あ、いや。待って。今のなし、」
「……私にはあの綺麗な月には手が届きません」
嶺亜さんはそう言って、月に向かって手を伸ばす。
……初めて聞いた。
多分『月が綺麗ですね』のお返事だと思うけど……。
なんだろう。
意味がすごく気になる。
「……んふ、頭の上ハテナたくさん浮かんでらっしゃいますよ」
「帰国子女のくせに難しい日本語覚えてるんですね」
「英語の方が良かった？」
「両方分からないのでストレートに言ってもらっていいですか？()」
ストレートに言うんかい、とどこか苦しそうに笑ったAさん。
そしてはぁー、と一息ついて口を開いた。
「……私には吉野は手に届かないよってことだよ」
Aさんは俺に返事をさせる前に、靴と靴下を脱いで海へ走っていった。
「ほらぁよしのーっ！ストレス発散付き合えーッ！」
「……ふは、はぁーいッ！(笑)」
��
「……ねぇなんで海に来るのにタオル持ってきてないのあんた」
「Aさんが準備良すぎなの」
「いや誰だよ海行こうって言い始めたヤツ」
砂浜に見事に足を取られてすっ転んだ俺。
全身砂だらけ。最悪。
「いやぁ、それにしてもキレイに転んだねぇ」
「バカにしてる」
「してないしてない(笑)」
もうなんか明るくなってきてるよ、と俺に笑いかけるAさん。
午前3時前。
朝の月に照らされるAさんがキレイすぎて、
「……ねぇAさん、」
「んー？」
好きです________。
……なーんて。
まだ言えない。
「タクシー代は俺が払います」
「割り勘でしょ(笑)」
「連れてきたの俺なんで」
Aさんに見合う男になってから、ね？
次は絶対『届かない』とか言わせないから。
覚悟しといてよ？
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作者名：L
| 作成日時：2020年6月12日 12時
