六 ページ2
午後、手当して貰うと、私は姐さんに連れられ、三渓園にやって来た
「いい景色じゃろう?」
「そうですね」
「お気に入りの場所じゃ」
上品に笑う彼女に、私も笑みを浮かべる
「中也とは、やっていけそうか?」
「不思議です」
「ん?」
「今日会ったばかりなのに…」
お兄ちゃんの様な安心感に近くて遠い、この不思議な感情に合う言葉を探す
「ふふ、一目惚れかのう」
「ひとめぼれ…?」
「殺し屋といえど、そなたも女子じゃな」
__女子?
「姐さんは?」
「私か?私の想い人は、首領に殺されてしまってのう」
「何故、此処に残ろうと思ったこのですか」
「生憎、行く宛もなくてのう」
__死のうとは、思わなかったのですか
「そうじゃのう…不思議じゃな…」
着物の袖で口元を隠し笑う姐さんの瞳には、僅かながら涙が溜まっていた
「私は所詮、闇に咲く花じゃ。闇に咲く花は、闇にしか憩えぬ。
そなたも、闇の花じゃ」
「それを決めるのは、貴女ではなく、私です」
姐さんは目を丸くすると、また笑った
「面白い奴じゃのう。じゃが、あまり光に憧れるでないぞ。堕ちた時、一番辛いのは自分自身じゃ」
光を知れば、光で咲く花になりたいと望むのだろうか
「孰れ判る時が来る」
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作者名:MIA | 作成日時:2017年8月5日 20時