そしてゼロになる 2【降谷零/安室透】

56.昔の恋 ページ11

上原side


『…気になる人？』

『そう！いないの？』


高校時代、

昼休みに私はAに気になる人はいないかと聞いた。


…まあ、所謂恋バナね。


高校のときって、そういう話を理由もなくしたくなる。

そういう年頃だった。



『気になる人…いないことはないけど…



…結衣は知らない人だし、聴いても面白くないよ』

『いるのね!!

いいからいいから、どんな人？』


私の勢いに負けたのか、

Aは照れたように苦笑して目を伏せる。



『中学生の時の同級生で…

同じ部活だったんだけどね。』

『確か…テニス部だったのよね？』


その頃の話はよく聞く。


…確か、混合ダブルスのジュニアカップで優勝したことがあるとか…


『あ、もしかして…ダブルス組んだ相手？』


『…うん。

彼ハーフなんだけど、すごい髪綺麗でね……あ、いや見た目だけじゃないよ。

かっこいいというか、かっこつけというか…冷静沈着にみせて、実は一生懸命足掻いてて…



…なんか支えてあげたくなっちゃうような人。』



Aは赤くなった頬を抑えて、

“やだ、恥ずかしい。中学生の時の話だからね”と笑う。






『…そういう結衣は？』

『私は甲斐さんよ！』


昔馴染みのお巡りさん。


自信たっぷりそう答えると、

Aは今度は困ったように苦笑して「だよね…」と笑った。





『(…敢ちゃん先輩…頑張れ…)』


彼女がそう思っていたことは今も昔も、私は知る由もない。

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