手当て ページ23
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入間くんの特訓に付き添い続けた結果。
最初こそ避けまくって全く取る気配がなかったものの、少しすれば手に当たるようになってきた。
これくらい普通のことだとしても、本人からすれば物凄い成長なのだ。アズくんもクララも、自分のことかのように喜んでいた。
雨の中でも走り込みをしたり筋トレをしたりと、入間くんも頑張っている。
そしてその反動か、いつもより少しだけ食欲が強い。
目の前に沢山の料理が盛られた大皿をぺろりと完食してしまった。
初見はその大食いっぷりに驚いたが、何日かすれば見慣れてしまった。クララが大皿を持ってきて、アズくんが入間くんに水を差し出す。
「お疲れ様です入間様! あいかわらずの食欲で…」
「ありがとう! お腹ペコペコだったんだ」
入間くんは水を落とした。
おや? と手元に視線を落とし、思わず目を見張った。
入間くんの手は、数日前とはうってかわって、ボロボロになっていた。
その手を見たアズくんが血相を変える。
「手が…傷だらけではないですか!」
「うん! ようやく手に当たるようになってきたんだぁ。取れるまで、もう少しだと思うんだけどね」
しかし当の本人は痛がる素振りなど全く見せず、笑顔のまま話題を逸らしてきた。
「あ、あとね。オペラさんの機嫌なら少し分かるようになったんだ! 耳が…」
「耳が立っていれば機嫌がよくて、垂れてれば機嫌が悪い、でしょ」
「そうそう! すごいねA、分かってたんだ!」
思わず口走ってしまった。
幼少期とはいえ、それなりに長い時間を過ごしてきた。
機嫌くらい、分かるようになる。
クララがアズくんの袖を掴んだ。
「入間ちすごいね! 悪魔って飽きっぽいのに」
「あぁ…入間様は……変わっておられる」
微かにアズくんが微笑んだのを、私は見逃さなかった。
オペラさんの元に戻り練習を再開しようとする入間くんを止め、傷の手当を引き受ける。
「マメは潰れてるし、内出血ができてる…ダメでしょ。こんなになるまで放置しちゃ」
「えへへ…早く上達したくて」
そう言ってはにかむ入間くん。
潰れたマメの汁を拭き取りながら注意をする。
「とにかく、怪我をしたらすぐに正しい処置を取る。いいね?」
はぁい、なんて返事が返ってくると思ってたのに、入間くんは笑った。
「…ふふ、A、オペラさんと同じこと言ってる」
「げっ…うそ最悪!」
「やっぱり仲良しなんだね」
「どこが!!」
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ペグ(プロフ) - あまねさん» あまねさん、コメントありがとうございます!ご期待に添えるよう、精進します!·͜· ꕤ︎︎ (5月10日 16時) (レス) id: a660ffe1a2 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 好きですぅぅ (5月9日 9時) (レス) @page45 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ペグ(プロフ) - めぇちゃりおる.⁠。⁠*⁠♡さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます!多忙期により更新が不安定ですが、暖かい目で見守ってください₍ᐢ‥ᐢ₎ ♡ (2月15日 15時) (レス) id: a660ffe1a2 (このIDを非表示/違反報告)
めぇちゃりおる.。*♡ - この作品読んだ瞬間お気に入りになりました!!更新も楽しみにしてます! (2月15日 14時) (レス) @page26 id: 094e17a662 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ペグ | 作成日時:2024年1月30日 22時