雪の降る日に捨てられた悪魔 (ページ28)

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イルマ｢伝手？｣

イルマさまはこてん、と首を傾げる。

A｢まぁ、伝手と言ってもイルマさまも知っているお方ですよ｣

ねぇ、とアズに話しかける。

そうすると、なにかに気づいたように顔を明るくして

アズ｢はい!!1番身近なお方ですね｣

首をふり賛同した。

───
帰宅後、直ぐに

A｢はい、がんばってー｣

と、手を振りイルマさまを庭へ送り出す。

部屋に戻り、制服から屋敷の制服へ着替え兄さんに顔を合わせる。

オペラ｢夕食の下準備はもうすんでいるので、あとは適当に。時間があまるようでしたら副菜に何品か、頼みましたよ｣

A｢頼まれました｣

すれ違いざまにハイタッチしながらのやり取り。

今日の夕食当番は珍しく私だ。

何故ならば兄さんにはイルマさまの教師という大役が任されたから。

SD見習いA、完璧に代わりを果たしてみせましょうとも。

そう、思いながらキッチンに立つ。

そして、私は兄さんの有能さに改めて舌を巻くのだった。

完璧に調節された下味。

残された行程はそこまで難しいものでは無い。

教わられた通りに揚げて、焼いて、蒸して、挟んで…下味にあった調理をすればいいだけだ。

そう、時間もかからずにすべき行程を終えた。

オートキープの魔術をかけて冷めないようにする。

昔から兄さんは、魔界の知識や体の使い方、家事など大凡のことは沢山教えてくれたが魔術だけは専門の方に習いなさい。

と、積極的に教えてはくれなかった。

そんな中、唯一教授してくれたのがオートキープの魔術。

これは屋敷の掃除などにも、応用できるので知っていた方が便利だろう。と教えてくれたのだ。

幼い頃から使っているせいで、無口頭でかけることも出来る。

たくさんのことを教えてくれた兄さん。

私の知る知識のうち1から85くらいまでは兄さんから学んだものだ。

出来ることが増えれば増えるほどに痛感する兄さんとの差。

その差をひしひしと感じた時、私は思うのだ。

あぁ、この悪魔(ひと)を追い越したい、と。

今は無理でも、いつかは。

今日は無理でも10年後は。

そう考えるだけで、胸の内からふつふつと"滾る"負けん気。

いつの間にか私の心うちでの野望(ゆめ)は兄さんをも黙らせる、"完璧なSD"になること。

そう決まっていた。

A｢───さぁて、イルマさま好みのデザートでも作りますかぁ｣

もちろん、副菜を作り終えたあとでの話だが。