45 ページ46
撮影が終わって監督から解放されたのは、深夜だった。
季龍狼名前で予約してあった、六階建ての安ホテル。
チェックインのとき、名前を名乗ると、
「お連れさんは、先に帰ってきてるよ。」
と、帽子をかぶったホテルの男にいわれた。
「あんたら、大陸からきたのかい？」
ジョ｢いや───」
返事に困ったジョーカーは、天井を指さす。
ジョ「空からきたんだ。」
「はっはっは！そいつはすげえ！まるで孫悟空だな！」
男が笑い、隣でそれを聞いていたAも余りのバカ真面目さに苦笑する。
ギシギシいう階段をのぼって六階へ。
教えられた部屋番号のドアをあける。
狭い部屋の壁はかつて白かったであろうと思わせるもの。
天井のファンが、生暖かい空気をかきまわしている。
A「…シャワー入れると思う？」
その問いかけにジョーカーは、期待できないな、と服をを着たままベッドに寝ころがった。
撮影はとてつもなく疲れるものだったからだ。
第一にどのアクションシーンも、ものすごく気をつかって手加減しなければならない。
ジョーカーが普通に腕を動かすと、あっという間に厳役を倒してしまい、アクションシーンがとれないのだ。
Aはと言えば華やかなセットとお茶と共に傲慢かつ上品でそれらしい台詞を言っていれば良いので特段疲れる要素はないのだが、それでもその表情は疲労を全面に押し出していた。
何が疲れるのか───
言葉だ。
中国語が苦手なわけじゃない。
ただ、李小蘭自身のあの甘ったるく媚びるような話し方に鳥肌がたってしまうほどの嫌悪感を覚えるだけ。
クイーン｢だいぶ疲れているようだね2人とも｣
そう声をかけて、部屋の隅からクイーンが現れた。
少しは悪いと思っているのか、態度がこそこそしている。
そして、ワインをついだり、買ってきた料理を広げたり、二人の期限をとり始める。
クイーン｢中々いい部屋だろ、調度品もアンティークなものばかりだし。」
ジョ「アンティークと古道具って言葉を混同してますよ。」
ジョーカーは、容赦ない。
A「そうよ！それにあれから一体どうしていたって言うのよ」
クイーンあれからって？」
質問、クイーンはとぼける。
ジョ｢僕たちが精神を削りながら映画の撮影をしていた時に、一体何をしていたのかって、聞いてるんですよ｣
横からジョーカーの低い声がする、
クイーン｢怒ってるのかい？｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ラーメン | 作成日時：2023年7月22日 1時
