41 ページ42
そして
「あっと、足がもつれた！」
白々しくバランスを崩し、持っていたコーヒーを龍狼に向かってかける。
しかし、つぎの瞬間───
龍狼は体をかわすと持っていたマグカップで、飛んできたコーヒーを受け取った。
満杯になったマグカップ。
コーヒーが、表面張力でぷるぷるしている。
「…東洋の神秘。」
スケルツィが、呟いた。
ジョ｢日常茶飯事ですよ。」
ジョーカーが、呟いた。
A「私もできるわ」
Aも呟いた。
そんな様子を見ていた洪監督が、大きな声をだす。
「さあ、コーヒーなら休憩の時にいくらでも飲ませてやる！ いまは、1フィートでも多く、フィルムをまわすんだ！」
洪監督のことばで、スタッフが動きだした。
龍狼に化粧をし小道具の風呂敷を持たせ、小蘭は西洋風のゆったりしたワンピースから華やかな赤が目立つ漢服に着替えさせられた。
スタッフがはなれると同時に、
｢カメラ、スタート！」
洪監督の声がとび、カチンコが鳴った。
まだ状況がわからずつっ立っている龍狼と五人の男が取り囲んだ。
───その様子をヒロインで金持ちのお嬢様役の小蘭は、コーヒーを片手に眺めている。
それぞれ、手にヌンチャクやトンファーを持っていて、だらしなく着くずした中国服が、いかにもチンピラっぽい。
「なんだ、おまえは？」
「よそ者か？」
チンピラが、龍狼を睨みつける。
「ここは、お前のような奴がくる所じゃねぇんだよ。」
チンピラのひとりが、ヌンチャクを振りかぶる。
すると、龍狼の目に輝きが戻った。
自分がなにをすればいいか、やっとわかった顔だ。
「やっちまえ！！」
飛びかかろうとするチンピラ。彼は、セリフを全ていうことができなかった。
五人のチンピラの動きが止まり、五人全員がその場にたおれこんむ。
「………？」
洪監督をはじめ、スタッフは、なにが起こったのかわからない。
理解しているAでさえ、やると思った、と苦笑いしている。
「…監督。カットじゃないんですか？」
カメラマンのひとりにいわれ、我に返った監督が、フィルムを止めさせた。
｢一体何が起こったんだ？」
きょとんとしている洪監督に、龍狼が説明する。
ジョ｢1人めやな右の肘をを打ちこみました。
2人目には右拳、三人めと四人めは左の二枚蹴り。
最後は、左掌底で倒しました。」
得意げにいう龍狼とは対照的に、洪監督は頭を抱えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ラーメン | 作成日時：2023年7月22日 1時
