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A「貴方は未来永劫、私を変装の名人として崇めるべきよ」
船をおりながらAは言った。
戦闘ではジョーカーに劣るA。
しかし、他の分野ならば劣る所か勝ってさえいる。
ジョーカーは変装が下手くそだ。
正確に言えば、変装は得意だが役に入りこむのが下手くそだ。
細かいところまで突き詰めず、結果ボロを出すことが多々ある。
Aは変装を得意と胸を張れるほどに、情報を集めることを信条としているのでさっきの様な状況に陥ることは少ない。
ふんふん、とどこか誇らしげな表情を浮かべるAにジョーカーはハイハイと絶妙な返事をした。
───
「よーし、次のシーンいこう!いよいよ、主役の登場だ!」
洪監督は、大きな声で現場スタッフにいった。
ここは、四龍島城砦にある廃工場。
機械が運び出された廃工場は、がらんとしている。
割れた窓ガラスから、明るい外の光が入ってくる。
床には、土ぼこりや鉄パイプが散乱している。
それらの間に撮影機材が設置され、スタッフが右往左往している。
レイバンの黒いサングラスをかけた監督が、近くにいた記録係に声をかける。
「で、その主役は、どこにいるんだ?」
「まだ現場に入られてません。」
「まったく、やっと本格的な撮影がはじまったっていうのに…」
「大丈夫ですよ、昨夜マネージャーの朱さんから連絡あったんでしょ。」
なだめるように、記録係がいった。
洪監督は、腕時計で時間を確認する。
時刻はまもなく、午後一時。
いまの形の感じを、濃監替は気に入っている。
できたら、この光があるうちに、主役登場のシーンをとってしまいたいんだがな…
C級映画の巨匠の監督は、今度の映画に監督生命をかけていた。
借りられるところすべてから借金をして、制作費をつくった。
「君の映画にでると、評判がさがる。」
そういう役者たちに頭をさげ、なんとか出演してもらえることになった。
そして主役には、香港若手映画スターの中で、ひそかに人気がでてきている李龍狼を獲得することができた。
オマケにヒロインは妹の小蘭だ。
最高の映画をとるんだ!
栄監督は、自然と拳を握りしめていた。
そんな監督の背後で、声がする。
「ご提案があるのですが!」
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作者名:ラーメン | 作成日時:2023年7月22日 1時