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「半月石を狙って怪盗クイーンがくるって話もあるしな。」
「へえ、そうなんだ。」
驚く小太りのの男に、背の高い野が得意げに説明する。
「この数日、インターネットの匿名で大量の書きこみがあるんだ。『経盗クイーンが、半月石を狙ってる。』とか、『伝説の怪盗が伝説の石を狙う!』ってふうにな。」
それを聞いて、ジョーカーはAを見た。
ジョ「そういえば、この数日、一生懸命コンピュータに向かってたね?」
A「気のせいじゃない?」
Aはあからさまにあっちの方を見てとぼける。
ジョ「何をしていたんだい?」
追い打ちをかけてくるジョーカー。
A「香港のおいしい食べ物屋さんを調べてたの、どの九龍屋さんが一番いいのかってね」
水平線を見ながらこたえるA。
その言い方が、棒読み口調だ。
怪盗を目立たせてどうするんだ、と白けた視線をジョーカーはそれ以上何も言わずに送った。
デッキの反対側では、ふたりの会話がつづいている。
「そういや、お前は強盗クイーンのファンだったな」
小太りの男がいった。
「ああ。携帯ストラップも持ってるぜ。」
背の高い男が、シャツの胸ポケットから携帯電話をとりだす。
「俺には理解できないな」
小太りの男は、首を捻る。
「お前には、浪漫を感じる気持ちがないんだな。『怪盗』とか『赤い夢』って言葉をを聞いたら、なにかこう…胸にぐっとくるものがないか?」
「別に」
背の高い男が、困ったもんだというように、肩をすくめる。
「俺は怪盗って言葉を聞くと、子どもの時に見た夕焼けの空を思いだすんだ。
楽しくて明るかった日中の時間が終わり、『さあ、今から闇の世界が始まるよ。』って、囁かれてるような気持ちになる。
クイーンは、その怪盗の系譜を、現代に受け継ぐ者だぞ、怪盗の美学を重んじ、己の犯罪に誇りを持ってるクイーンは、俺の憧れだよ。」
それを聞いたクイーンの肩がピクりと動かし、Aは船室でゴロゴロとワインを飲むクイーンを思い出して首を傾げる。
クイーンはジョーカーとAにはなにもいわず、フェリーの売店に歩いていく。
不思議そうに2人が見ていると、クイーンは売店でアイスクリームの三段重ねを買った。
そして、背の高い男のそばへいくと、かん高い声をだした。
クイーン「まあ、なんて素敵な方!暑いでしょ、アイスクリームをどうぞ。」
きょとんとしている男の手に、アイスクリームを渡す。
となりにいる小太りの男には、目もくれない。
クイーン、いや、ニコニコ顔の朱マネージャーは二人のところに帰ってくるといった。
「わたしも、なかなか有名だね。」
と。
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作者名:ラーメン | 作成日時:2023年7月22日 1時