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"その日"の朝も、フェリーは、船内の売店で乳脂肪分の多いアイスクリームを買う客やデッキで風を楽しむ客で、賑わっていた。
クイーン「いやあ、気持ちいいわねぇ!」
プラスチック製のサングラスをかけた大柄な女性が、歓声をあげる。
クイーン「ほら、君たちも見なさい。
香港島が、段々小さくなってくわ。」
女性の隣には、すその長い中国服を着た長身の男と華奢な少女が立っている。
男は周りを見ながら、小声で女性に言った。
ジョ「お願いですから、少し落ち着いてください。
僕らは観光にいくんじゃないですから。」
そう言う男は右に忠告しながら、左にいる少女をがっしりと掴んでいた。
少女はそうでもしないと、暑いと言って海にダイブしそうなくらいのお調子者だからだ。
少女の手にはソフトクリームが握られており、今は比較的静かだがいつ突拍子も無いことをやらかすかわかったものでは無い。
クイーン「当然ね。お仕事にきまってるじゃない。」
女性の口調が急に改まりサングラスを人さし指で、くいと持ちあげる。
クイーン「撮影隊は、既に一週間まえに四龍島城砦に入ってます。私たちが合流して、本格的に撮影が始ままります。」
肩からさげていた派手なショルダーバッグからスケジュール手帳をとりだし、チェックするふりをする。
ジョ「流石変わり身がはやいですね、クイーン。」
呆れたように男性がいった。
クイーン「クイーンではなく、マネージャーの
そして、貴方はジョーカーではなく、香港若手アクションスターの
隣の彼女は同じく女優を務める妹の
間違えないようにね。」
ウフッと笑う朱マネージャーに、ソフトクリームから口を離した少女。
A「もう、妹役は飽き飽き。
どうせなら恋人役がいいわ、やっぱりそっちの方が楽しいもの。
それに、この歳になって
クイーン「しょうがないだろ、手頃な配役だったんだ」
クイーンは気持ちはわからんでもない、とAの掌に小銭を握らせた。
視線の向こうにはカラフルな色をしたジェラートがある。
やったぁ!とAは早速購入しようと体を動かす。
しかし───
ジョ「もう、5回も食べてるじゃないか。
お腹が痛いと言われて被害を被るのは僕なんだからな」
ジョーカーがそれを許さなかった。
チェッとAはそっぽを向いた。
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作者名:ラーメン | 作成日時:2023年7月22日 1時