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超弩級大型飛行船トルバドゥールの船室には、凄まじい緊張感が漂っていた。
土台は木で作られたたカメをひっくりかえしたもの。
その腹の上にに、長さ十センチほどの白い角材が、建設途中のビルディングのように積み上げられている。
すでに、その高さは1mを超えていた。
かすかな空気の動きにも、揺れるオブジェ。
そのオブジェの頂点に、またひとつ角材を置こうと伸びる白い手。
A「1056手め…行くわよ」
白い手の持ち主は息を飲んで体を固める。
そして、時期に収まる角材タワーの揺れにホッと胸をなでおろした。
次に、天井から伸びた銀色のアームが、新しく角材を掴む。
[1057手め、いきます。]
スピーカーから、微かな音。
アームがゆっくり動き、オブジェの頂上に角材をのせた。
───ゆらり
角材が乗った動物で、全体が左右に揺れる。
息づまるような時間が過ぎ、やがて、揺れは小さくなり、止まる。
クイーン「二人とも中々やるじゃないか」
その声の人物は、白い角材を一本持つと、不敵に笑った。
クイーン「1058手め、いくよ」
無造作に手を動かす。
そして、正確にオブジェの上で手を止めた。
角材を持った手には、微塵の震えもない。
オブジェの上に角材が触れる。
余裕の笑みが浮かぶ。
しかし、次の瞬間───
ジョ「なにやってるんですか!」
船室のドアがバンと開き、槍のように鋭い声が飛ぶ。
ガラガラと崩れるオブジェ。
角材を持ったまま、余裕の笑みが凍りつく。
船室に入ってきた男、ジョーカーは、室内を見まわした。
A「くっ…私の…マカロン…」
呻くようなAの声。
[……ジョーカー。私には今のあなたが悪魔に見えますよ。]
天井のすみのスピーカーから、人工知能のRDの声がした。
状況が飲み込めないジョーカーは、首を捻る。
[しかし、邪魔が入ったものの、この勝負は私のの勝ちですね。]
その言葉に笑顔が凍りついたまま静止していた人物、クイーンが角材を投げだした。
クイーン「ふん!」
拗ねたようにいうと、クイーンはソファーに寝ころがる。
銀色の髪が、ギリシャ彫刻のような横顔を隠した。
ジョーカーは、部屋の中に散らばった玩具を、拾い上げ、無言で説明書きを読んだ。
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作者名:ラーメン | 作成日時:2023年7月22日 1時