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A「何で私なの?」
置かれた手に取る。
クイーン「だって、私が戦えば弱い者いじめになってしまうよ」
ジョ「僕が戦ってもだ」
弱い者いじめ、その言葉にサーカス団の者の空気がピリつく。
A「私が戦ってもそうよ」
そして、一人の少女の言葉に完全に凍りつく。
背丈の小さい、少女に筋肉隆々の大男が弱いと言われているのだ。
しかし、少女はそんな雰囲気に臆する事なくぶつぶつ文句を垂れると変装を解く。
畳んでいた関節を音を鳴らしながら戻し、短くなったワンピースの裾を弄る。
内側で止められていた分の布が伸び、適切な長さのワンピースに早変わりした。
A「ちょっと待ってね」
力男に一声かけてAはポシェットのなかからルージュを取り出しその場で塗り始めた
A「どお?」
ジョ「……綺麗だよ」
小言を言う気も失せたジョーカーは虚無を感じながらいった。
しかし、その言葉は本心だ。
ルージュ一本で少女が女性に早変わりする。
綺麗と言う言葉に自信を貰い、Aは力男の前に立つ。
「その華奢な体で俺に勝てるとでも?」
力男はそう言った。
A「ええ勿論。素手じゃハンデにならないからそこの鉄の棒をお使いなさいな」
演技の際も彼が使っていた鉄の棒に視線をやるA。
A「力が強いだけのチンケな野郎の攻撃なんてあたらないわ」
クイクイ、と挑発気味に曲げられたAの指が戦闘開始の合図だった。
まんまと挑発に乗り怒りに身を任せフルスウィングされる鉄の棒を流れるように避けてAは力男の懐に潜り込む。
そのまま体を思い切り反り反動で顎を蹴る。
力男は倒れ、Aは綺麗に着地した。
その際にキンッという金属音がする。
A「私、何も仕込んでないとは言ってないもんね」
Aの靴は爪先に金属の板が貼られた仕込みが入った靴であった。
ちなみに親指の部分を強く踏み込めば刃も出てくる。
顎に強い衝撃が加われば脳震盪が起こる。
幼い頃に収容所で学んだ人を殺すための技術。
人間の体の弱点は全て記憶してる。
それが、化け物級に強い奴からみた最弱、一般的な人から見た超人の生きるすべであった。
クイーン「ご苦労様。一発で倒すことができるなんて見事なものだよ」
クイーンは顔をパァッと明るくさせて言った。
当たり前でしょ、というようなAの頭を撫でてから続ける。
クイーン「もっとも、君の力量をみぬけなかった時点で彼の負けは決まっていたけどね」
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作者名:ラーメン | 作成日時:2023年7月22日 1時