ハルのさやみる小説 ⑦ (ページ36)

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時を超えて　62 ページ36

「ふぅ…やっと終わった」

恵は構えていた剣を下ろした。

ＮＭＢ帝国は、他の国に比べ魔道士育成に力を入れてきたせいあってか、この国の兵士は他国に比べ個人個人の強さはもちろん、戦闘技術や戦術においても精錬されている。

そして、ＮＭB帝国は勝利を収めた。

恵は彩の姿を探した。

すると、目に飛び込んできたのはたくさんの死人の中心に血だらけで、空を見上げただぼーっと立っている少年の姿。

恵はそれが誰なのかわかって、さーっと血の気が引いた。

フラッ

「彩！」

恵が駆け寄り、膝をついた彩を抱きしめた。

彼は震えていた。

(全部、返り血…)

「ハァ…ハァ」

彼の息は荒くて、鼓動は激しく、恵にも伝わってくるくらいだ。

「彩、ゆっくり息しろ」

「ハァ…ハァ…」

落ち着く様子はない。

彩の部隊の皆も集まってきて、心配そう見つめている。

「大丈夫…大丈夫やから」

恵は落ち着かせようと背中をさする。

すると、

「どいて」

そう声がして、その声の方を見れば彼女の姿があった。

ブオォォォン

さすがは、菜々の1番弟子だっただけあって、彩の呼吸は落ち着いてくる。

「彩、大丈夫か？」

「っ…」

その先を言わず、彩はうめくように泣き出してしまった。

その姿を、ただ静かに皆がそれを見つめることしかできなかった。