時を超えて 46 ページ20
しかし、そこには里香の肩で荒く息をする彩がいた。
｢彩！｣
｢ハァ…ハァ…ちょっとミスっちまった…｣
彩は軽く無理に笑った。
｢とりあえず、そこに座って｣
彩を座らせと、彼の服を脱がせた。
そこには、深い傷から浅い傷まで多く怪我が見える。
｢なんでこんな…｣
｢いやぁ、ちょっと体がうまく動かなくて｣
やっぱり、無理にでも止めておくべきだったと由依は後悔する。
彩が無理してるのには、なんとなく気づいていた。
きっと体が動かなかったのも、最近の疲れが原因なんだろう。
私、大切なものを奪われるのは、もう耐えられないよ。
｢もっと…自分を大切にしてよ…｣
絞り出した精一杯の言葉。
｢大丈夫だよ、これくらい｣
そうやっていつも平気な顔してはぐらかす。
そんな彩に、由依は抑えていた何かが吹っ切れてしまった。
｢これくらいじゃないやん！
いつもそう言って彩は無理する！
なんで、もっと自分大切にせえへんの！？
いつも仕事行って、待ってる私たちの気持ちも考えてよ…｣
｢由依、ごめん｣
｢謝って欲しいんやなくて｣
パンッ！パンッ！
険悪な雰囲気に、人知れず明るい拍手音が弾ける。
｢その話はそこまで！
それにしても、由依が治癒魔法使えて良かったな｣
｢あぁ、助かった｣
｢はぁ…そうやってすぐ怪我しても私が治せるとでも思ってるんでしょ｣
｢実際そうやん、由依の治癒魔法はなかなかのもんや｣
｢もー！こっちも結構疲れるんやから、あんまり怪我としんといて｣
｢わかってるって｣
わかってる。
けどさ、二人のため子供達のためだというのなら別に怪我なんていくらでもしていい気がするんだ。
それで笑って暮らせるならいいやって。
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作者名：ハル | 作成日時：2017年1月2日 19時
