時を超えて 44 ページ18
夜。みんなが寝静まったころ。
｢また出るの？｣
外へ出る準備をしていた俺に由依が背後から声をかけた。
｢あー、うん｣
｢ねぇ、最近ちょっと仕事の行くの多くない？｣
｢そうだな｣
｢お金はどうにかやりくりしてるし、夜はやめなよ｣
｢俺は大丈夫やから。
それに、アイツらが大きくなったらもっとお金がいるようになるやろ？｣
｢そうだけど…
なら私も行く｣
｢それはアカン。
由依だって仕事してるんやし、子供たちの世話もある｣
｢でも、彩は危ないクエストばっかり行くんやもん｣
｢まぁクエストのランクが高い分、報酬高いから…
つい手に取ってしまうねん｣
｢アホ、彩になんかあったらさ…｣
｢あーもう！そんな辛気臭い顔すんな〜」
そう言って彩は由依の頬をつまむ。
｢由依が思ってるほど、そこまで俺無理してないから大丈夫や｣
｢うん｣
すると、里香が顔を出した。
｢おーい！彩、そろそろアイツらに魔法おしえてやれって｣
｢それは、お前がすればええやん｣
｢嫌や、教えるの苦手やねん。
それに、俺やって仕事あるし｣
｢まぁ、暇があれば頼むよ」
｢いつもそれやで｣
「ごめんって」
「まぁしゃーなしやな」
｢あと、アイツらには防衛魔法しか教えるなよ｣
｢もちろん、わかってる｣
｢んじゃあ、行ってくるわ｣
｢おう！｣
｢気をつけてな｣
｢夕方には戻るから｣
｢うん、気をつけて｣
ドアを開けて家を出れば、少し冷たい風が吹いていた。
あの日もこんな日だったな。
菜々と里香と北へクエストえでかけた日。
戦争の土地へと足を踏み入れた。
そこは、想像以上でものすごい被害だった。
そんな寒い日に、俺たちは凍える少女を見つけたんだ。
話を聞けばその子の親は戦争によって亡くなり、家もなくなってしまったと言う。
３人の優しさ。そこから始まったのだ。
家族という名の、孤児院を作ったのだった。
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作者名：ハル | 作成日時：2017年1月2日 19時
