歪みと距離 14 ページ14
山本彩。
そう口にすると、「あら、彩ちゃんのお友達？珍しいわね」っと言われた。
部屋は305号室。一人部屋だ。
この先に、彩がいる。
大きく深呼吸をして、ノックして、聞こえてきた声はやっぱり少し低い私の好きな声。
ガラガラ
「やっぱりバレちゃったか」
私の姿を見るなり、彩はそう口にした。
「なんで、なんで…」
「全部知りたい？」
「うん」
彩はゆっくりと口を開いた。
「私、病気なんだよ。
昔から心臓のね」
心臓の病気…なんだか、知ってる気がする。
「でも、心配しなくて大丈夫だから。
別に死ぬとかじゃないし。今はちょっと調子悪くて、大事をとって入院中」
「そう…なんだ」
「てか、覚えてない？美優紀は私のこと」
少しずつ蘇る小さい頃の記憶。
小さい頃の記憶なんて嫌なものしかなかったから、忘れようと必死で思い出さないようにしてきた。
両親に捨てられて保護された時、衰弱していた私は病院にお世話になっていた時期がある。
その時に、誰か傍に居てくれた気がする。
「覚えてないのかよ…
私ずっと覚えてたのに」
いつの間にか、彩のことを抱きしめていた。
一人ぼっちだった私の傍に居てくれたのは、昔も今も彩だったと気づいたから。
「はは、やっと思い出した？」
笑って彼女は言う。
「…言ってくれなきゃわかんない」
「言わなくてもいいかなって思って」
いつだって君はホントに勝手だね。
私が言えたことじゃないけれど。
「ねぇ、彩」
「ん？」
「今度は私の話聞いてくれる？」
「うん」
利用していた、散々自分勝手に彼女を使ってた。
それなのに、こんな事伝えるのって間違ってるのはわかってる。
でも、当たって…それで砕けちゃってもしょうがない。そう思えるくらい、彩に想いを伝えたかった。
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作者名：ハル | 作成日時：2017年1月2日 19時
